動物園といえば、恋人とのデートや子どもとの行楽で出掛ける定番スポット。動物のしぐさや、その愛らしさに癒されること間違いなし。ところが!フライマンの視点から見るととフライマテリアル(素材)の宝庫に映るようだ。
フライ(毛バリ)の素材とは
フライフィッシングで使うフライの素材は、浮力の高さを生かせる動物の毛が多用されている。
釣具店でフライ用品コーナーをじっくり見ていくと、一見すると何に使うのか分からない材料がたくさんあるはず。鳥の羽のほかにも、動物の皮+毛の状態の材料が多数陳列されている。
頭付きのマテリアル(コンプリートスキン等)に初めて出会うとびっくりするかもしれない。
ということは、動物園は素材の宝庫?
フライ素材となる動物
トラ、ゾウ、レッサーパンダ、ライオンなどのメジャーどころはともかく、ゲージ内で見つけるのが大変な鳥類や、動きの少ない動物はスルーされがちだが、中にはフライタイイング素材として使われている動物もいる。
今回はその中からいくつかをピックアップしていこう。
ヘラジカ
例えばヘラジカ。大きな角が特徴だが、ヘラジカは立派なフライの素材となっている。
部位や雄、雌の違いによって呼称は変わるが、有名なのは「エルクヘア」。この素材をウイングに使った「エルクヘアカディス」といえば、初心者が使うドライフライの定番中の定番。視認性を高めるためあえてブリーチしたものが売られていることもある。素材1枚の単価は500~1200円くらい。
ウサギ
最近どこの動物園にもあるのが、ふれあいコーナー。ブタやヒツジ、カメ、ウサギ、モルモットなどと触れ合えるため、家族連れに大人気。
動物にストレスを与えないための人数制限があり、なかなか入れないこともある。ここではウサギに注目したい。
ウサギの体毛はラビットという名で呼ばれ、ダビング材(下巻き糸に撚る素材)として使われる。可愛さだけが売りじゃないのね。
クジャク
フライで使われるのは鳥の羽が多い。
タカ、ワシなどの希少性の高い猛禽類はゲージ内での展示になっているが、ニワトリやクジャクなどのあまり飛ばない鳥は園内を自由に歩き回っていることも。
ハックル材としてよく使われるコックネックは雄鶏の首周りの部位で、いろいろなフライに使える万能素材。回数使える分かなり高価(6000円程度~20000円強)。
初詣の神社などでもよく見かけるが、ニワトリが目の前にいると食味的な意味でも捕まえたくなる。また、クジャク=ピーコックは、その部位によって「アイ」「クイル」「ハール」などと呼ばれており、独特な色合いが特徴だ。「ピーコックアイ」が1枚150円~。
カモ
鳥獣類館内は温室なことが多く、小型鳥類が放し飼いになっていたり、熱帯性の爬虫類などが展示されているところが多い。小型の鳥たちにはゲージがないので、かなり接近して写真を撮ることもできる。
ここでは水辺に浮かぶカモ科の鳥に注目。カモから取れるフライの素材と言えばCDC。CDCとはクルピオン・ドゥ・カナール(Croupion De Canard)の略で、要するにカモのお尻の脂線あたりの羽毛のことを指す。
繊維が細かいため非常に浮力が高いのが特徴の素材で、小さなドライフライのウイング材としてよく使われる。1g100枚入りで1200円~2200円。重さ換算だとかなり高価に思うカモ。
剥いじゃダメ!
動物園を散策し、ヘラジカを見て「あの角、カッコイイ!」と思ったアナタは普通の感覚。「おー、この毛並みは最高のエルクヘアだ」と思ったアナタはかなり重症。フライタイイングに取りつかれているかもしれない。
最近フライコーナーを持つ釣具店が近所になくなってしまい、マテリアルの調達もしづらくなってきている。園内を自由に闊歩していたニワトリの首回りを、某有名ゲームっぽく「剥ぎ取りたい!」なんて思ってしまうのは仕方ないこと?!マテリアルどこかに落ちてないか~。
あっ!あそこにも。
※注※ 園の許可なく素材の持ち帰りは当然NGです。
<小谷/TSURINEWS・関東編集部>