渓流釣りの中でもシンプルな装備で楽しめる「テンカラ釣り」。専用ののべ竿にラインと毛鉤をセットするだけで、ヤマメやアマゴ、イワナといった渓流魚を狙うことができます。今回は、テンカラ釣りに必要なタックル(竿・ライン・仕掛け・毛鉤)と釣り方について詳しく解説します。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・落合浩大)

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渓流でのテンカラ釣りとは?
テンカラ釣りとは、竿・ライン(道糸&ハリス)・毛鉤のみのシンプルな仕掛けで、ヤマメやイワナなどの渓流魚を狙う釣り方です。操作方法もシンプルで、毛鉤を川に流す動作を繰り返すだけなので釣り初心者にも向いています。さらにダイレクトな魚の引きを感じることができる仕掛けのため、釣り本来の楽しさを味わえる点も魅力といえるでしょう。

テンカラ可能な管理釣り場も
テンカラ釣りは、本格的な渓流だけでなく管理釣り場でも楽しめる場所があります。管理釣り場では放流が行われているため魚が釣りやすく、さらに障害物が少ないためキャストの練習もしやすいのが魅力です。
そのため、テンカラを始めるなら、まずは管理釣り場で練習してみるのもおすすめです。
テンカラ釣りのタックルと仕掛け
まずはテンカラ釣りに必要な竿・ライン・仕掛けといった道具面から解説していきます。

テンカラ釣りの竿
テンカラ釣りには、専用の竿を使うのが一般的。テンカラ竿は、キャストしやすいように6:4~7:3の調子に設計されており、仕掛けの投入と回収を頻繁に行うため、軽量化されているのが特徴です。3000~4000円程度で十分実用に足る竿が売られているので、安価に入門できるのも嬉しいポイントと言えるでしょう。
竿の長さは川幅に合わせて変えるのがベストですが、汎用性が高いのは3.3~3.6m程度。源流域などの川幅が狭い場所では、3m以下の短めの竿が取り回しやすく、広い渓流や本流域では、より長い竿を使うことで毛鉤を遠くへ送り込むことができます。

テンカラ釣りの道糸
テンカラ釣りでは、道糸がキャスト時のオモリの役割も果たすため、専用のラインを使用する必要があります。
テンカラ専用のラインには、テーパーラインとレベルラインの2種類があります。テーパーラインは、先端に向かって細くなる設計で、重量があるため軽い毛鉤でもスムーズに飛ばすことが可能です。
一方、レベルラインは太さが一定のため、好みの長さにカットして使用できます。ただし、テーパーラインに比べて軽いため、キャストには少しコツが必要です。また、素材はフロロカーボンが多く、巻き癖がつきやすい点には注意が必要です。癖がついたままだとキャストが安定しないので、手で伸ばすなどして巻き癖を取ってから使用しましょう。
道糸の長さは基本的には、竿と同じ長さのラインを使用し、川幅や釣り場の状況に応じて調整します。太さについてはテーパーラインは号数を選べないことが多く、レベルラインの場合は一般的に3~3.5号程度が基準になります。

ハリス
テンカラのラインの先には、フロロカーボンまたはナイロン製のハリス(リーダー)を約1m結束します。素材によって下記のような特徴があります。
フロロカーボン:伸びが少なく強度が高いほか、水に対して比重が高く沈みやすいのが特徴。
ナイロン:適度な伸びがあり食い込みがよく、フロロに比べて水に沈みにくい。
魚の活性や釣り場の特徴、狙う深さなどに合わせて使い分けるのがポイントです。
ハリスの太さは一般的に0.8号前後が使われますが、ニジマスなどの大型魚がいる釣り場ではさらに太い1~1.5号も選択肢に入ります。道糸とハリスの結束については、エイトノットやサージェンスノットなど簡単な結び方で大丈夫です。
初心者にはセット仕掛けも
テンカラの仕掛けには竿の穂先にチチワ結びや投げ縄結びで取り付けるだけで、簡単に釣りを始められるセット仕掛けも販売されています。仕掛けがシンプルなので結び方さえ覚えれば自作も容易ですが、初心者はセット仕掛けから始めてみるのもおすすめです。
テンカラ釣りの装備と道具
渓流では川を横断したり、足場の悪い場所を移動することがあるため、ウェーダーの着用が推奨されます。特に靴底がフェルト製のウェーダーは岩場での滑りを防ぐのに効果的です。また、暑い季節であればウェーディングシューズに水に強い素材のゲーターやソックスを組み合わせた「ゲータースタイル」も身軽で涼しく人気があります。
さらに、転倒や落水のリスクも高いため、フローティングベストやグローブ、ヘルメット(帽子)なども着用しましょう。水中からの情報量が増える偏光サングラスも必須級のアイテムです。
その他にあると便利な道具は以下になります。
ハサミ:仕掛け作成に必須
プライヤー:針を外すときなどに便利
ランディングネット:魚をスムーズにキャッチでき、毛鉤を外す際の手間も減る
熊鈴や熊スプレーなど熊対策グッズ:山間部では熊と遭遇する可能性もあるため
フィッシングベルト:移動が多い釣りのため、小物を身につけられるベルトがあると手が塞がらず便利
ビク(魚籠):魚を持ち帰る場合はベルトなどに取り付けられる小型ビクがおすすめ。クーラボックスは車に積んでおこう
テンカラに使う毛鉤(フライ)
テンカラに使う毛鉤は、市販のテンカラ用毛鉤(和式毛鉤)をはじめ、フライフィッシング用の毛鉤や自作の毛鉤など、さまざまなものを使用できます。特にサイズの選び方が重要で、活性が高いときは#12、低いときは#14を基準にするとよいでしょう。解禁当初など低水温で食いが浅い場合は、さらに小さいサイズを試すのも効果的です。
また、毛鉤の素材や針の大きさによって、浮くタイプと沈むタイプがあり、状況に応じた使い分けが有効です。 基本的には沈むタイプを使い、水面直下を狙うことが多いですが、夏場など魚が水面を意識しているときは浮くタイプで流し、逆に活性が低く表層まで追ってこないときは沈下速度の速いタイプを使って深いレンジを狙うという方法もあります。
形状(タイイング)については、魚が食べている虫に似せるのが一般的ですが、速い流れを数秒流す釣りなので見切られにくく、シルエットが大まかに合っていれば問題ないことが多いです。 カラーもそれほど重要ではなく、視認性を考慮してピンクなどを選ぶ人もいます。
テンカラ釣りは「反応する毛鉤を探す」釣りではなく、「使っている毛鉤に反応する魚を探す」釣りの要素が強いので、必要以上に毛鉤にこだわる必要はありません。まずはテンカラ用の毛鉤セットを購入し、気になったものから試してみるとよいでしょう。

テンカラ釣りの基本的な釣り方
テンカラ釣りで釣果を左右するポイントの一つが、狙った場所に正確に毛鉤を振り込めるかどうかです。キャストの基本動作は、アナログ時計の針の動きをイメージすると分かりやすいでしょう。
まずは、竿を2時の位置まで後方に強く振り上げ、一瞬止めます。その後前方に振り出し、10時の位置で止めてキャストするイメージです。
特に重要なのは、後方に振り上げるとき「タメ」を入れることです。しっかりタメを作ることで、ラインが後方に伸びきり、パワーが生まれてきれいなループを描きます。
狙うポイントの選び方
テンカラを流すポイント選びも重要になります。テンカラで釣れる代表的な魚種であるヤマメ・アマゴとイワナでは、好むポイントが異なります。
ヤマメ・アマゴ:流れの中に定位することが多いため、泡立っているような流れの筋や落ち込みなどが狙い目。
イワナ:比較的流れの緩やかな障害物の影などに身を潜めているため、大きな岩の周りや流れの側にできた緩流などに毛鉤を流すと効果的。
このように、魚種によって居着く場所は少し異なりますが、共通するのはエサが流れて来やすい場所を好むこと。渓流釣りではYパターンとも呼ばれる複数の流れが集まる場所や、ICパターンと呼ばれる反転流が発生する場所など、エサが流れてきやすい変化のあるポイントは、積極的にテンカラを投入してみましょう。
また、渓流魚は非常に警戒心が強い生き物なので、ポイントに入る際には物音をたてない、水面に必要以上に近付かないなど慎重にアプローチすることも重要です。

毛鉤を流すコツ
ポイントに入ったら、まず狙いたいコースの少し上流へ毛鉤を振り込み、3秒ほど流すのが基本です。時間が短いのは、長く流しすぎると魚に見切られやすくなるため。小まめに打ち直したほうが釣果は上がります。 3回ほど同じコースを流したら、別のコースやポイントを探りましょう。
流す際のラインテンションは適度にたるませるのが基本。ラインがピンと張っていると毛鉤の動きが不自然になってしまいます。また、テンションのかけ方によって毛鉤の沈む深さが変わるため、反応がないときは調整しながら流してみましょう。
アワセ(フッキング)
アタリは目視かラインの動きで判断することが多いです。魚が毛鉤を咥えたら、ワンテンポ待って魚が反転してからアワセを入れるのが基本。また、アワセ方は大きなアワセは必要なく、手首を返してシャープに行いましょう。
<TSURINEWS編集部・渡辺>