今年もタチウオの季節がやって来た。輝く美しい白銀の魚体に、触れなば切らんばかりの鋭い歯。そしてその細長い魚体から想像もつかない豪引と、恐ろしい顔からは想像もつかない繊細な食味。伊勢湾ではすでにシーズンインしたが、今年も人気なのがテンヤタチウオ釣法だ。シンプルながらも、驚くほど高いゲーム性に魅了されたアングラーは数知れず。今回はそんなテンヤタチウオについて紹介したい。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
アタリを見極める
さて、いよいよ実釣だ。できれば釣行前夜に2~3個のテンヤにイワシをセットしておくと、現場に着いてスナップにテンヤを付けるだけなので、すぐに釣りを開始しやすい。
船長の「水深〇m、底から〇mまで探って」という指示が出たら、早速テンヤを投下。底に着いたらまず3mほどただ巻きしてから誘いに入る。誘いはチョンチョンよ小刻みにシャクリを2~3回入れて止める。あるいはゆっくりただ巻きして2~3秒ステイ。これの繰り返しだ。
手巻きリールでカウンターがないときは、PEラインの色を見て船長の指示するタナまで探ってくる。
アタリはふわっと触るようなものから、コツンとつつくようなものまでさまざま。問題はアワセのタイミング。最初にぶつかる壁がここだ。
コツコツとつつくようなアタリはスルーしてそのまま誘い続け、ゴツッと押さえ込むようなアタリでアワせるのが正解。ただあくまでこれは教科書通りのアワせ方で、いきなりゴンッと押さえ込んで掛かっていたり、コツコツが延々と続いて上げたらエサがほとんどなくなっていた……なんてこともある。
アワセを確実に
最初は掛からなくて悶絶すると思う。大いに悩むと思う。だが、何匹か釣っていくうちに、アワセのタイミングが分かってくる。
大事なのはアタリがなくなったとき。さっきまでアタってたのに、止まった……というときは必ず上げてエサをチェックしよう。イワシがズレていたりボロボロにされたりしたら、すぐに交換だ。
ひとついえるのは持ち上げるアタリは、大型が多い。イカメタルとしたことがある人は分かると思うが、テンションが抜けて穂先が持ち上がるのはイカならスッテ、タチウオならテンヤをくわえて上方へ泳ぐから。ミチイトのテンションが抜けるので、穂先が持ち上がるのだ。これは必ず即アワセしよう。
アワセは思い切り振り上げるのではなく、テンヤをずらす程度で十分。ただし、スピードは必要だ。もったり動かしていては掛からない。素早くコンパクトに、そしてショートにキレのあるアワセを入れよう。
一定に巻き上げる
ヒットした後のファイトだが、ポンピングはご法度。サオをやや下に向け、一定のスピードでテンションを緩めないように巻き上げる。相手がドラゴンなら、途中で何度も激しく引き込む。そのときはいったん巻く手を止め、引きにじっと耐える。
タチウオは細長い体を器用にくねらせ、バックして泳ぐ。これが引きとして伝わるのだが、青物のように長続きしない。少し耐えれば引きが弱まるので、テンションが抜けないように素早く巻き上げを再開する。
取り込みは魚が見えたら、いったんサオを置きリーダーをつかんで抜き上げる。ドラゴンサイズなら船長がタモですくってくれるか、ギャフで引き上げてくれる。
バーブレスの勧め
巨大なテンヤのハリには、もれなくカエシが付いている。このカエシをぜひつぶして使ってみてほしい。驚くほどフッキング率が上昇する。さらに人や服に刺さってもすぐに抜けるし、いいことづくめなのだ。
「バラシが増える……」と言う人がいるが、ヒット後のラインテンションを抜かないことを心がければ、ほとんどバラすことはない。ぜひ一度試してみてほしい。
魚を絞める
釣り上げたタチウオは必ずフィッシュグリップで、頭の少し下ぐらいをしっかりホールドして持つ。写真撮影はこの状態がお勧め。ヒレに鋭いトゲはないが、10号のイトを一瞬でかみ切る恐ろしい歯を持っている。少し触れただけで、人間の皮膚などいとも簡単に切り裂いてしまう。
グリップでつかみ、エラブタの下からハサミを入れてエラを切り、海水を入れたバケツに突っ込んで血抜きする。この時期は海水温が高いので、ある程度血が抜けたら、すぐにクーラーに移そう。クーラーには氷は多めに準備しておくこと。
最後に
釣ったタチウオは、どう料理しても美味。大きいものは皮目をあぶった刺し身、塩焼き、煮つけ、小さめのものは3枚に下ろして天ぷらや唐揚げがお勧めだ。獰猛な顔つきから想像もつかない繊細は味に驚くことだろう。
<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>