魚の名前を表す漢字は基本的に、ひとつの字につきひとつの魚が当てられていますが、稀にそうではないものもあります。
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「鯊」ってなんて読む?
昨今の雑学ブームのせいか「魚の名前を表す漢字」について目にする機会が多くなっているようです。「魚編に〇〇でなんと読む?」的なクイズは老若男女を問わず、非常にポピュラーなものとなっています。
そんな「魚を表す漢字」のうち、やや読み方の難易度が高いもので「鯊」があります。これは我が国では一般的に「はぜ」と読み、天ぷらダネで有名なマハゼなどを表しています。
しかし紛らわしいことに、漢字が生まれた国である中国では、この字は「サメ」を表すことが多いようです。なぜ全く異なるこれらの魚が同じ漢字で表されるようになってしまったのか、理由は良くわかっていません。
「鮎」「鮪」は要注意
この「鯊」のように、日本と中国で表す魚の種類が異なる漢字は他にもあります。
例えば「鮎」。これは我が国では塩焼きにすると美味しい「アユ」を表しますが、中国では「ナマズ」を表します。魚編に占うという字のつくりから、何らかの占いに用いられた魚(日本ではアユ、中国ではナマズ)にこの字を当てたために、両国で別の魚を表すようになってしまったのではないかと考えられています。
また「鮪」も日中で表すものが違う字として知られています。日本ではこの字は「マグロ」を表しますが、中国では「チョウザメ」を表します。中国からこの字が伝わるときに、中国の人が「(チョウザメという)大きな魚を表す」と記した書物を見た日本人が「大きい魚……マグロのことか!」と取り違えてしまったことが、表す魚が異なってしまった理由だと言われています。
英語にも同様のものが
さて、このようなものは漢字だけでなく「英語」にもあります。それは「サンフィッシュ(sunfish)」。これは一般的には「太陽のように大きくて丸い魚」ということでマンボウを指すことが多いようです。
しかし、学術的にはサンフィッシュというのは、ブラックバスやブルーギルなどが含まれる「サンフィッシュ科」を表すことが多いです。ブルーギルも正しくは「ブルーギルサンフィッシュ(青いエラを持つサンフィッシュ)」という名前です。
現代でこそブラックバスやブルーギルがメジャーな存在となったために間違われることもなくなりましたが、かつては英語の文学を翻訳するときに取り違えるミスが発生し「淡水釣りの話なのになぜマンボウが登場するの……?」と読者を混乱させてしまう事もあったようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>