食卓にあがる魚として、あるいは多くの釣り人にとっても、もっともポピュラーな魚といえば「アジ」だろう。しかし、我々はその認知のわりに、この魚について詳しくを知らない。アジはどんな一日を送り、一生を送るのか?今回はアジの基本情報について解説しよう。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
アジは一生をどう過ごすのか
まず、アジの一生は、どのようなものなのか?
アジの寿命は最大5年と、そこそこ長い。最大5歳ともなるわけだから、あれくらいのサイズの魚としては、驚くべき長寿とも言えるのではないだろうか。ただ、どうして5年経って大きくなった長命の個体が、それ以上生きられないのかは、知るべくもない。生命時計が切れてしまうとしかいえない。
常にエサを追う生涯
このように簡単に断定してしまっていいかわからないが、客観的に見る分、アジは食べるために生きているようだ。常にエサを追い求め回遊し、食べて寝て、また起きて回遊する。そんな一生を最大5年送る。むろん多くの魚の捕食対象となるので、食べられて消えるものも多い。
常にエサを追う毎日を送る、とは、「食べることを目的に生きている」と言いかえることもできる。
常に適水温とベイトを求めて動く
「食べることを目的に生きている」、アジの存在理由をそんなふうに見てしまうのも冷笑的なようだが――そんな彼らは、では一体、まず一日をどう送るのか?一生は一日の堆積なので、一日を見ることで、ある程度は彼らの行動のすべてを知ることができると言えよう。
適水温の水中でベイトを食べ続ける一日
アジはエサを追い求めてずっと泳ぐ。その中でも、行動しやすい「適水温」の水中で捕食を行う。どうせ食うならば、自分にとって居心地がいい場所で泳いで食いたいわけだ。アジの適水温は15℃~24℃と言われる。これらを上回ったり下回ったりすると、アジは人間が感じる1℃を4℃の変化に感じるらしく、極端に寒くなったり暑くなったりすると、その場に居ていられないのだ。真夏の高水温期や真冬の低水温期に沿岸からアジが姿を消すのは、そういう理由である。
閑話休題。アジ自らの適水温の中でも、さらに居心地の良い適水温に近い場所で捕食をし続ける。回遊にはエネルギーが必要なので、少しでも胃に余裕があれば小さなベイトも目一杯まで食う。捕食は一日中続けるが、もっともよく食うのは早朝と、夕方から宵の口。夜になると、常夜灯や建物の灯りで光合成し増殖するプランクトンを追って、沿岸まで差してくる。我々アジングアングラーが釣るのは、このプランクトンパターンの群れというわけだ。
春夏秋冬、このような行動を続ける。夏だから暑すぎて食いやめるのではなくて、夏でも沖の冷たい水の中に潜って捕食を続ける。真冬は沖の暖かい潮に乗って回遊し捕食を続ける。
年間15cmの成長
アジの成長スピードは年間15cmほど。回遊する魚は大きくなりやすく、最大50cmを超す。最大30cmが喜ばれるショアのアジングで我々が釣ろうとしているのは。つまり1年から2年弱生きたアジというわけだ。
連中、比較的に長寿なのかどうか……アベレージでどれくらい生きるのかわからないが、まあ豆アジのときに食われることを免れた、なかなか運のよい奴らなのかもしれない。
大きいアジは沖にいる
上述のように、「適水温の中でも、またひとつ心地よい適水温の中で捕食したい」という魚なので、実際にそのようなエリアを回遊しているアジの方が長寿で大きい。よって尺アジ以上を手堅く求めるとなると、沖のバチコンとなる。しかし沿岸でも潮通しのいい場所に遠投できれば、たまたま回遊のタイミングさえ合えば尺アジ以上を釣ることもできるだろう。
アジの一生は、「食い続けることにあり」。シンプルで、ちょっとうらやましいことだ。
<井上海生/TSURINEWSライター>