深海の生態系の9割はいまだに謎 深海魚たちの独特過ぎる生存戦略とは?

深海の生態系の9割はいまだに謎 深海魚たちの独特過ぎる生存戦略とは?

高い水圧と冷たい海水のなかで生きる深海魚たち。整っているとはいえないけれど、なんだか憎めないフォルムが魅力的で、愛好家も少なくありません。

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サカナト編集部

サカナに特化したメディア『サカナト』編集部のアカウントです。本とWebで同時創刊。魚をはじめとした水生生物の多様な魅力を発信していきます。

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深海の水圧

深海とは水深200メートルよりも深い海域のことで、その海域に住んでいる魚類が深海魚と定義されています。深海というのは過酷な環境で、水に潜ると圧力(水圧)は10メートルごとに1気圧増えるといわれています。

人間が安全に潜水できるといわれる深さは約30メートルまでと考えられているので、深海魚たちにはその何倍もの圧力がかかっていることになります。

また水深1000メートル以降は太陽の光も届かないため視界も悪く、水温も2~4度という冷寒状態です。深海魚はこういった厳しい環境に、どのように適応したのでしょうか。

深海に適応するための体内構造

人間は10メートルほど潜ると、水圧で鼓膜が圧迫され耳が痛くなります。深海魚がすんでいる水深200メートルでは、水圧に耐えることは到底できません。

陸の生き物や浅い海にすむ魚は、体に隙間が多い構造をしているため、高い水圧がかかると押しつぶされてしまいます。それに対し深海魚の体は、筋肉や脂肪、ゼラチン質で隙間なく構成されているので、外からの力がかかってもつぶれにくいのです。

また餌が少ない深海では、消費するエネルギーを最低限に抑える必要があります。極力遊泳せずに浮力を確保するため、水より重い筋肉や骨といった組織が減少し、水分や脂肪分を多く含んだ体の構成になっています。

超深海の生き物

浅海魚は浮き袋を使って浮力を得ています。しかし大きな圧がかかる深海では、気体の入った浮き袋はつぶれてしまいます。深海魚の浮き袋は、高水圧や水圧の急激な変化に耐えるため、水分より軽い脂肪やワックスが含まれていたり、そもそも浮き袋を備えていなかったりと、高い水圧に適応したメカニズムが備わっているのです。

6000メートルを超える水域は超深海と呼ばれ、地上の約600倍以上の水圧が襲い掛かります。この水域に住んでいるのがシンカイクサウオ、別名スネイルフィッシュです。

スネイルフィッシュは、真っ白でオタマジャクシに似た体形をしており、大きさは約20センチ。浮き袋を持たず、体中に油をためて浮力を確保しているといわれています。

2022年、東京海洋大学と西オーストラリア大学の共同チームが行った小笠原海溝での調査で、観測史上もっとも深い8336メートルでの撮影に成功(超深海調査でギネス世界記録を更新、公式認定されました 水深8336メートルの「超深海」でスネイルフィッシュを確認-東京海洋大学)しました。

深海での生存戦略

水深200メートルから1000メートルは中深層と呼ばれ、深海と呼ばれる領域の中でもわずかに日光が届きます。

この水域に住むムネエソの仲間には銀化という擬態を見ることができます。ムネエソは、グアニンという銀色の結晶によって、銀色で光沢のある体表面を持っています。鏡のように光を反射するため、海中に擬態し捕食者から隠れることができます。

また、発光してカモフラージュする魚もいます。ムネエソ科の魚やハダカイワシ科の魚には、腹部に発光器が備わっていることがわかっています。中深層ではわずかに光が差し込んでいるため、日中に海面を見上げると魚影が浮かび、居場所がバレてしまいます。

そこで腹部から同じ明度の光を放つことで、シルエットを消して身を隠しています。これをカウンターイルミネーションと呼びます。

深海の生態系の9割はいまだに謎 深海魚たちの独特過ぎる生存戦略とは?海中から見上げると魚影が浮かぶ(提供:PhotoAC)

また中深層の魚は、少ない光をたくさん取り込めるように大きな目を備えていることが多いです。1000メートルより深い海では目が退化しますが、魚の発光を捉えるために、光を知覚する機能は残っています。

深海魚は環境に適応して暮らしている

この記事では、深海魚が環境に適応するためのメカニズムを紹介しました。

地球上の約65パーセントを占める深海ですが、その生態系はいまだに90パーセントが謎に包まれているといわれています。今後の研究や調査に期待が高まりますね。

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(サカナト編集部)