【ギネス最深記録8336m】を記録した深海魚「クサウオ」とはどんな魚か

【ギネス最深記録8336m】を記録した深海魚「クサウオ」とはどんな魚か

不毛な死の世界だと思われてきた「水深8000m以深」の世界で生きる魚たち。いったいどんな魚なのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:茸本朗)

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その他 サカナ研究所

魚の「最深記録」が更新される

先日「史上最も深い場所で泳ぐ魚」が発見され、世界的なニュースになりました。

日本やオーストラリアなどの科学者が参加する国際研究チームが発見したこの魚は「スネイルフィッシュ」と呼ばれているもの。撮影されたのは世界屈指の水深を誇る伊豆・小笠原海溝の水深8336mでのことです。

【ギネス最深記録8336m】を記録した深海魚「クサウオ」とはどんな魚か深海性のスネイルフィッシュの一種(提供:茸本朗)

これまで魚の生息が確認された最深の場所は、世界で最も深い海として知られるマリアナ海溝の水深8178mでした。今回発見された場所はそれよりも150m以上深く、ギネス記録として登録されることになりました。

なお、浸透圧などの理論上、魚が生存できるは水深8200~8400mくらいまでだろうと推測されており、今後記録が更新されるとしても数m前後であろうと専門家は予測しています。

一体どんな魚なのか

今回見つかった「スネイルフィッシュ」は、和名を「シンカイクサウオ」といいます。その名の通り、深海に棲む「クサウオ類」の一種です。

【ギネス最深記録8336m】を記録した深海魚「クサウオ」とはどんな魚かクサウオ(提供:茸本朗)

クサウオは世界中の海に生息するグループで、その仲間は浅い海から深海まで広く分布しています。今回の発見より前に、水深8000m強の場所で採取された魚もチヒロクサウオというクサウオの一種でした。

クサウオは美味

クサウオという響きはあまり食欲を喚起しませんが、実は漢字で書くと「草魚」であり、臭い魚という訳ではありません。代表種であるクサウオは日本でも少なからぬ水揚げがあり、水揚げの多い福島県相馬地域では食用として流通することもあります。

その肉質は大変水分が多く、骨までも柔らかく全身がとてもブヨブヨしています。そのため鮮度落ちが早く、産地以外に流通することはあまりありません。味はあまり特徴的ではありませんが、生で食べると独特のくにゅくにゅとした食感が楽しめます。また、じっくり水分を抜きながら揚げるとふわふわして美味しくなります。

【ギネス最深記録8336m】を記録した深海魚「クサウオ」とはどんな魚か水分が多いので調理に工夫が必要(提供:茸本朗)

今回発見されたシンカイクサウオについては、これを食べた人はおそらくまだいないと思います。ただしクサウオ科には似たような味のものが多く、シンカイクサウオについてもおそらく同様の味わいと思われます。チャンスがあれば食べてみたいものですね。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>