サヨリや一部のサカナのお腹の内側が黒くなっていますが、その理由を知っていますか?
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サヨリってどんなサカナ?
サヨリは、ダツ目サヨリ科のサカナです。日本では琉球列島と小笠原諸島をのぞき、北海道南部以南の本州や四国、九州から朝鮮半島や黄海まで広く分布しています。
ダツ目だからと言って、想像するような凶暴なダツではなく、動物性プランクトンを主食とする最大でも40cm程度の小型のサカナです。体は細長くて白銀色で、下アゴの先端が赤いのが大きな特徴です。
このような体の特徴から漢字では「細魚」とか「針魚」と表記されますが、クチナガ、スズ、クスビ、カンヌキなどの地方名も存在します。
また、中国では、姜(きょう)という人が長いくちばしを釣りバリに用いたという伝説にちなんで、姜公魚とも呼ばれているそうです。
見た目とは裏腹に腹黒い?
慣用句の中に「腹黒い」というのがありますよね。
「心に何か悪だくみを持っている」「陰険で意地が悪い」という意味で、口ではいいことを言っていても、心の中では反対に嫌なこと思っている人などに対してこの言葉が用いられます。
実はこの語源はサヨリからきていると言われています。
サヨリは素晴らしく美しい姿や下顎の先端が紅をさしたように紅いことから”海の貴婦人”とも呼ばれています。しかし、お腹を開くと見た目の雰囲気とは反対に、内側の膜は真っ黒になっています。
このことから「外見と違い、実は腹が黒いやつ」という、外面と内面が正反対の人に対しての例えとして使われるようになり、昔は腹黒い人のことをむしろ”サヨリのような人”と表現したようです。
今では「サヨリのような人」と表現する人はむしろほとんどいなさそうですね。
どうしてお腹の内側が黒い?
では、どうしてサヨリのお腹は黒いのでしょうか。これには諸説ありますが最も有力なのが、「日光から内臓を守る」というもの。
サヨリは海面近くを泳ぎ、小さなプランクトンを食べて生きています。しかし、彼らが食べたプランクトンの中でも植物性のものは、彼らの体が透明で光を通る故、胃袋の中で光合成を始めてしまうのだそうです。
すると、光合成により酸素が発生してしまい、胃の中にガスが充満し、体が浮いてコントロールが効かなくなってしまうのです。こうなると鳥や大型のサカナに捕食されやすくなってしまうため、進化の過程でお腹の膜が黒くなったと考えられています。
腹が黒くても美味しくて体にいいサカナ
腹が黒くても、サヨリは非常に美味しいサカナです。高級魚のひとつとも呼ばれ、割烹料理店や天ぷら専門店、寿司屋などでも取り扱われています。
脂肪がほとんどなくカロリーは低いですが、亜鉛やナイアシン、カルシウムなど栄養が多く含まれています。とくにナイアシンは、二日酔いの原因となるアセトアルデヒドという物質の分解を助ける効果が期待できるため、お酒を飲む席で一緒に食べると◎。
刺身や天ぷら、塩焼きなど淡白で上品な甘みのあるサヨリは3月から5月ごろまでが旬だと言われています。
是非この機会に「腹黒い」サカナをご賞味ください。
<近藤 俊/サカナ研究所>