長く釣りをしていると、釣りの最中にいろいろな経験をする。今回は著者がマイボートで釣りに出かけた際に遭遇した出来事で、非常に心に残っているエピソードだ。久々に振り返り、改めて「ありがとう」と感謝を述べたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター有吉紀朗)
航行中にエンジン停止
もう30年以上前の冬、ディーゼル船でポイントに向かう途中に冷却水の温度が上昇する警報が鳴り、エンジンが停止した。船底にある冷却水取り入れ口にビニール袋を吸い込んだのかもと点検しても異常なし。まだ携帯電話がない時代なので、誰にも連絡できないピンチに陥った。
このまま漂流していると他船に迷惑がかかるし、海苔やワカメの養殖場に流れてしまうとレッコしてあるロープが怖いし、あまり長い時間機関室に入るとワッチできないので危険。たぶんポンプを回すベルトの切断と思ったが、予備と替えるのは港の中でも30分くらい掛かる。そこが原因かも確証がない。
通りがかりの船からヒーロー登場
とりあえず見張りしながら修理しなければと思っていると、工事用通船が近くを通りかかった。エンジンが止まっても航海灯は点いている。まだ薄暗いのでライトで合図して怒られるかなと思っていると、横抱きして同じ位の年の人が乗り込んできて「ちょっと見たるわ」と声を掛けてくれた。
機関のプロと思い少し安心したが、本業は自動車屋さん。またラグビーマンなので機関場にも入りにくそう。やはり原因は冷却水ポンプを稼働させるプーリーからのベルトの切断で、予備に用意していたベルトを渡すと驚くほど早く修理してくれた。2ktくらいで南に漂流していたので、早い完璧な修理は揺れる中ではさぞ困難だったろう。
助けてもらった縁で
もしあのまま漂流していれば、海苔セットに絡み漁業者に迷惑をかけたり、横波を受け転覆していた可能性もあるので、本当にありがたかった。この時エア抜きのポイントやオイル、発電機や電装品のことも教わった。
これが縁で釣りに誘い、以降私の船のチョッサー兼ボースンになってくれた。ヨットも乗り、港湾工事、潜水もする海のプロ。この時も彼が操船して港湾工事に向かう途中だったそうだ。
船底の掃除をしてくれたことも
また、ある時は知らない間に船底を潜って掃除してくれていた。
船と言うのは何もしなければ船底にフジツボやカキが繁殖して性能が著しく落ちてしまう。だから年1回は上架して船底塗料を塗らなければならない。余裕のある人は、年2回は上架して塗り直している。
ちなみに日本海海戦ではロシア・バルチック艦隊は長い航海で船底にカキとかが付着して汚れていたのも敗因と考えられている。海戦が行われた5月は特によく汚れる月だ。