落ちハゼ釣りは近場で気軽に楽しめる釣りとして近年知名度が上がってきている。今回、紀ノ川での実釣報告をベースにしながら、チョイ投げで落ちハゼとの接近遭遇を高めるための工夫について考えてみたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター牧野博)
紀ノ川河口で落ちハゼ活発
12月29日、寒波が少し和らいだのを見計らって紀ノ川右岸、北島橋橋脚そばの護岸に釣行。午後3時半から約2時間のチョイ投げ。下げ潮回りではあったが、橋脚周囲の潮のヨレを狙って50mまでの近投中心で型はやや小ぶりながらハゼ17cmまでを16匹、ピンギスが2匹。
投入毎に魚信がある活性の高さで、2点掛けも数回あり、2021年の釣り納めを好釣果で締めくくることができた。
サオは改造ルアーザオ10ft、リールはキャスティズム25、ミチイトPEライン0.8号、チカライトは汎用PEラインの4号を13mにカットして用いた。オモリはL型の12号、仕掛けはスピードハゼ6号の2本バリ(ハリスの間隔は15cm)である。
落ちハゼと遭遇するには
今回は落ちハゼとの遭遇チャンスを増やす方法を考察してみたい。
ハゼもキスもともに暖かい海域を好む魚である。寒くなって水温が低下してくると水温の安定した水深のある場所へ移動することでは共通している。しかしハゼの場合は冬から早春が産卵期に当たっている点でキスと習性の違いがある。このことが落ちハゼの着き場を考える上でキーポイントになってくると思う。
1、盛期にミャク釣りで狙う場所などは、天候による水温の変動が大きく、コンスタントに落ちハゼを狙うのは難しい。同じ河口部でも、水深のある場所を重点的にマークするほうが、魚信は得られやすい。
しかも、冬場は川の水温よりも海水温の方が高い場合が多いので、上げ潮がよく当たる場所の方が水温は安定しやすい。
2、大河川で、釣り場の背後に護岸堤防が作られている場合、北西の季節風を考え、両岸のうち風裏になるのはどちらか、考えてみる。例えば紀ノ川の場合、東から西に向かって流れるので、右岸側は風裏になる。
風裏は水温が安定しやすいし、アングラーにとっては、寒さをしのぎやすく、キャスト時のライントラブルや仕掛け絡みなども少ない。
3、ハゼ(マハゼ)は、厳寒期に干潟の砂泥底にトンネルを掘り、その中で産卵することが知られている。このことは、ハゼの越冬に干潟やそれに近い環境の場所が必要であることを物語っている。
産卵のために深場に集まってくるという点が落ちギスと異なり、ある程度の期間(1か月位)、散発的に釣れ続くことも結構ある。
これらのことを考え、落ちハゼに遭遇しやすいポイントとして次のような釣り場が考えられる。
1、風裏側の橋脚の周り
今回釣行した紀ノ川右岸、北島橋橋脚周辺がこの条件の釣り場である。大きな橋脚の周囲は潮が当たり掘れて深場が形成される。今回のポイントは、この橋脚周囲の深場からのカケアガリである。また、暖かい上げ潮がよく当たる場所であることは、キスが釣れたことで判断できよう。
このポイントの川下側100~200mは干潟が拡がっていて、ハゼの産卵場になっていると考えられる。
橋脚の近くを釣るので、キャストには充分注意が必要である。冬場はチヌ狙いのアングラーが入ることも多いので、その場合は他のポイントに移動する。
2、港の内側のミオ筋
河口周辺にある大きな漁港の波止の内向きは、風裏になりやすく、そこにミオ筋があれば、魚の付き場になる。港の港内向きでカレイを狙うときにはこのような場所が好適だと思うが、同じ場所に落ちハゼも着いている。
このような釣り場の場合、港内の広さにもよるが、やや重いオモリ(20号前後)を使う場合もあるので、軟調の投げザオのほうが向いている。
このパターンで落ちハゼを釣った場所として記憶しているのは、大阪の深日港である。ここは昔、フェリーが発着していた比較的大きな港で、港内も水深がある。しかも近くには川の流れ込みがあって砂泥底で、カレイやガッチョも多いポイントである。
3、埋め立て地周辺
大規模な埋め立て地は川の河口部の浅瀬に作られていることが多く、その周囲の海域はハゼの着き場になる。和歌山のマリーナシティの周辺は、もともと干潟に近い遠浅の砂泥底で、キスの多い海域であるが、キスを釣っていると、良型のハゼが交じることがある。また、周囲の干潟にもハゼが多い。
落ちハゼに遭遇しやすいポイントを分類し実例をあげて紹介した。いずれにも共通しているのは、風裏の深場で、近くに砂泥底の干潟や浅場があることといえる。こう考えると、都市部の河川の周辺にはポイントが多く、シティーアングラーにとって身近な冬場のターゲットといえる。東京湾岸周辺に落ちハゼ釣りのポイントが多くあるのもうなずけるだろう。