日本屈指の豊かな生態系を誇りながら、外来種の侵入に苦しめられている琵琶湖。ブラックバスやブルーギルなどの外来魚問題は知られていますが、「外来水草」問題についてはあまり知られていません。
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琵琶湖の「水草」に脚光
最近、琵琶湖で夏場に繁茂する「水草」を活用した商品開発が、いろいろな分野で活発になっていることをご存知でしょうか。
琵琶湖では現在、年間5,000~6000tもの水草の除去が行われています。琵琶湖を擁する滋賀県ではこれまで、除去された水草を約2年かけて自然発酵させ堆肥化し、農家等に無料配布してきました。
しかし、発酵処理時間の長さや活用策の少なさも課題となっており、県は民間企業による水草の利用技術開発支援に取り組んできました。
その結果現在では、水草をガラス製品や革製品の染色材料にしたり、汚泥の処理技術を応用して迅速に堆肥化する技術が開発され、利用されています。こういった技術の開発を行った関係企業は「琵琶湖の厄介者と扱われがちの水草の可能性を知ってほしい」と語っているそうです。(『「琵琶湖の厄介者」水草に脚光 ガラス・革製品、商品開発に活用』京都新聞 2021.9.5)
なぜ「水草」が問題?
琵琶湖では1994年の大渇水以降、琵琶湖大橋より南の通称「南湖」を中心に水草が異常発生しています。滋賀県によると、ここ数年は年間10,000トンが発生していると見られるそうです。
もし湖の水面が水草に覆われてしまうと、水中に酸素が行き渡りにくくなり、生態系や水質に悪影響を及ぼします。また水の流れが阻害され滞留することで悪臭が生じたりするなど、人が暮らす環境そのものへの悪影響も発生してしまいます。
さらに、繁茂した水草が一度に枯れることで湖水が急激に富栄養化し、プランクトンの大量発生やそれに伴う貧酸素水塊が発生することがあります。これが水棲生物の大量死を引き起こせば、湖の環境全体に不可逆的な悪影響を与える、といったことが起こる可能性もあります。
琵琶湖のような大きな湖であっても、水草は驚異となりうるのです。
外来種問題は魚だけではない
現在琵琶湖で問題となっている水草の多くは、いわゆる「外来水草」です。琵琶湖ではいま、全国各地で問題になっているホテイアオイを始め、多種の外来水草が繁殖しています。
中でもとくに深刻なものが、2014年に特定外来生物に指定された「オオバナミズキンバイ」。確認され始めた当初はこの水草が繁茂している水域の面積は約142平方メートルだったのですが、約3年後の2012年12月には約22,435 平方メートルと160倍にも増殖し、一時期は南湖の大部分を覆うほどになったそうです。
そのあまりの勢力から、2013年には国の「緊急雇用創出特別推進事業」制度を活用し、その調査と駆除が行われました。現在でも、学生ボランティアなどによって除去が続けられています。
他にも「史上最悪の侵略的外来植物」と言われるナガエツルノゲイトウや、ミズヒマワリなどの外来水草が確認されています。これらはいずれも観賞用水草として愛好家によって移入されたものと見られており、「水辺を愛する心が水辺を破壊している」という皮肉な状況になってしまっているのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>