名手・山本太郎氏が実釣を通して当日の模様を詳しく解説していく『チヌ釣り伝道師!山本太郎の好釣果へのターニングポイント』。今回は、乗っ込み期の狙い方について紹介しよう。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 編集部)
モーニングは狙うべきか?
モーニングとは、前日の釣り人がまいたエサを早朝、徘徊して「残りエサ」をあさりにきたチヌをダイレクトに狙うというもの。ダンゴにエサを包まず、さしエサだけを落とし込んで直下や周囲を探るのだが、チヌが居れば、ほぼ一発で乗ってくる。居れば一発なので実に手っ取り早い狙い方だが、警戒させてあとが続かなくなる、いわゆる「スミ1」になるのではないか、というウワサも少なくない。
真相はどうなのか。私にもそれは分からないが、これまでの経験からスミ1で終わったこともあるし、モーニングで釣れてダンゴ釣りに切り替えてもちゃんと釣れたこともある。
それどころか、モーニングだけで釣れ続いたこともあり、最高7匹の良型を仕留めてしまい完全にヤル気が失せて早上がりしたこともある。
これまでの経験からして、あの「早朝の徘徊組」は、いわゆるアウトサイダー。はぐれ者の性質を持っていて、まきエサを打つとかえって散ってしまったりしやすい。
まきエサに寄ってくるのは「ヤル気のあるチヌ」、早朝徘徊するのは「ヤル気のないチヌ」で、一時的にだが性質が異なると考えている。特に乗っ込み期のこの時季は、ナーバスなゆえにアウトサイダーになる個体も少なくないようだ。
モーニングをやる、やらないはそれぞれの自由。どちらかといえばやっておいた方がいいと私はお勧めする。効果があるのはボケ。必要最小限のオモリでチヌに見せながらゆっくり落とし込むのが効く。直下と周囲を丹念に、深追いはせず20~30分程度探りを入れてみよう。
ダンゴ釣りの基本
モーニングが終われば、いよいよダンゴ釣りにスイッチ。スタートはオキアミだけを刺し、やや強めにダンゴを握り込んで確実に着底させる。
チェックしたいのは、ダンゴに何者かがつっついてこないかどうか。着底後すぐに割れてしまうダンゴでは分からなくなるので、しっかり握り20~30秒は見届けること。
三重県下の釣り場は、ボラが方程式になるパターンが多い。とはいえ乗っ込み期はまだまだボラも少なく、いきなりダンゴにアタックしてくることは期待できない。また、ボラが居ないからといってチヌが絶対釣れない時季でもない。
ただ、ボラが居ると居ないとでは攻め方や組み立て方、さらには海況も大きく変わり、チヌが釣れる確率も格段に上がる。ダンゴアタリが全くないなら、まずこのボラを寄せてやる気持ちで、自分のリズムを作りながら打ち返しを続ける。
釣り場にもよるが、この時季はまだエサ取りは少なく、さしエサもそのまま戻ってくることが多い。2~3時間はひたすらそんな状況が続くことを覚悟しなければならないが、その間、突然チヌが入ってくることもある。特に仕掛け回収時には細心の注意が必要だ。
チヌがエサをくわえた後、ほとんど動かない「居食い」だが、乗っ込み期はこの居食いが頻繁に見られるので気をつけよう。
チャンスが訪れたら
ボラの気配がなかったのに突然ダンゴアタリが出だした。あるいはエサが残らなくなったり、取られていたさしエサが残りだして急に海況が変わってきた。これらの現象は全てチヌが寄ってきたチャンスと見ていい。
時合いを察知することは重要で、次の一手、またチャンスを逃してしまうことも回避できる。チャンスと感じたら、われわれ釣り人側が最優先ですることは、ダンゴの割れるタイミングの微調整と、割れてからのさしエサを見せるインターバルの微調整だ。
一概には言いにくいが、それまでエサ取りが活発だった後、急にさしエサが残りだしたのならダンゴの割れを10~20秒単位で遅く、ボラがいい感じでダンゴにアタックするようならやや早めにダンゴが割れるようにといった具合で、そのときの状況を加味しながら臨機応変にいろいろと試してみよう。
インターバルについても、ダンゴが割れてから2~5分程度、30秒単位でいろいろ微調整してみると答えはきっと見えてくるはずだ。
悩ましい質問
「朝からダンゴを打ち続けても状況が全く変わらない、エサ取りすら寄らない場合、ダンゴをまとめてドカ打ちするとチヌが寄らないか?海況が好転して魚の活性が高まらないか?」という質問をよく受ける。
大変難しく、悩ましい問題だ。この問題も人それぞれ考え方に相違があるが、私は「ノー」と答えている。状況が悪いときにドカ打ちをしても、それが好転につながるとは思えないし、ダンゴの煙幕や匂いはすぐに消えてしまうだろう。やはりコツコツとリズムを崩さずに!「継続は力なり!」である。
状況が悪いとき、これといった決め手はなく、私もひたすらコツコツと打ち返しを続ける派だが、もしそんな事態になってドカ打ちしたい感情に駆られたら、思い切ってサオを置き、30分程度の時間をかけてダンゴの空打ちをしてみよう。
リズムは先に打ったダンゴの煙幕が海底に沈み切ったころに次のダンゴを打って、という具合だ。あるいはダンゴも入れず完全に場を休ませることで変化を呼び込めるかもしれない。昼を回って午後へと折り返してくると気持ちも焦るが、最大のチャンスである「夕マヅメ」を虎視眈々(たんたん)と待とう。焦りと諦めは禁物だ。