「目をつぶることができない動物」というイメージが強い魚ですが、実はできる魚がいくつかいます。それでは「まばたきができる」魚はいるのでしょうか。
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フグが目をつぶる?
日本最大のフグ取引市場がある山口県下関市。ここにある水族館「市立しものせき水族館 海響館」の職員が先般、フグに関するユニークな論文を発表し、話題となっています。それは「フグがどのようにして目をつぶるのか」というテーマの論文です。
じつは研究者のなかでは、フグやその仲間であるマンボウが「目をつぶる」ことは以前から知られてきていました。しかし、そのメカニズムははっきりしていなかったのです。
今回の論文の執筆に当たり、100種近いフグを展示する同水族館のスタッフが、フグの動画を分析したり、電気刺激実験などを行い、詳しく調査したそうです。その結果、周りの皮膚や筋肉が目の中心に向かって同心円状に収束し、目を覆うという仕組みがあることがわかったといいます。(『フグはどうやって目をつむる? 下関の水族館職員が論文』朝日新聞 2021.5.4)
このメカニズムは、陸の生き物が「まぶたを閉じて目を覆う」のとはまったく異なるものだそうです。
サメも目をつぶる
「まばたきをしない生き物」というイメージが強い魚。しかし、上記のフグ類の他に、サメなどの軟骨魚類にも「目をつぶる」例があることが知られています。
ジョーズで知られるホオジロザメなどいくつかのサメは、餌を捕食するときに目をぎゅっと閉じます。これは暴れる獲物から目を保護するためと言われています。
ただ彼らはいずれも「瞬膜」と言われる、目の表面を保護する膜を用いて目をつぶっており、彼らもやはり陸上生物のようなまぶたを持つわけではありません。
また、深海性のおとなしいサメであるナヌカザメは、休息時に目を閉じ、海底に横たわるところが観察されています。しかしこれもまぶたではなく「瞬皺」と呼ばれるもので、目の下部の筋肉をギュッと上に上げて目をふさいでいるそう。
まぶたを持つ魚がいる?
では果たして「まぶたを持つ魚」はいるのでしょうか?
アジの仲間で「マブタシマアジ」というものがいます。まぶたがあるように見えるからこの名前がついているのですが、残念ながら彼らもまぶたを持っているわけではありません。
彼らの「まぶた」に見える部位は「脂瞼」とよばれるもの。目を保護するための膜で、閉じたり開いたりすることはできないため、いわゆるまぶたとは大きく異なります。
現状は「まばたきする魚」というのはファンタジーの中だけの存在だといえそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>