春の旬「ホタルイカ」の不思議な生態 仲間と会話をするために発光?

春の旬「ホタルイカ」の不思議な生態 仲間と会話をするために発光?

春の味覚の一つ「ホタルイカ」。光ることは有名ですが、その理由を知っていますか?ちょっと変わった生態に迫ります。

(アイキャッチ画像提供:Pixabay)

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その他 サカナ研究所

ホタルイカの生態

ホタルイカは、軟体動物類のホタルイカモドキ科に属する深海性のイカで、「コイカ」や「マツイカ」とも呼ばれています。

胴長は雄が4cm~5cm、雌は5cm~7cmで、重さ10gと非常に小さなイカです。

日本でホタルイカが生息しているのは新潟県沖から山陰沖にかけてで、まれに太平洋岸でも捕獲されることがあります。

ホタルイカは一年魚と言い、一年しか生きられまえん。

ふ化後は水深200~600mもの深いところで成長し、次の春に産卵のためにまた浅瀬にやって来ます。

日本でのホタルイカの産卵は富山湾が世界的にも有名で、富山湾独特の珍しい現象は世界でも他に例はなく、富山湾の富山市から魚津市にかけての沿岸域は国の特別天然記念物に指定されています。

名前の由来

その名が「ホタルイカ」になったのは、明治38年、東京大学教授の渡瀬庄三郎博士の命名によるものでした。

そもそも博士は、昆虫のホタルがどのような地域に棲んでいるかを調査しているときに、富山県に光を放つイカがいると聞き研究をはじめ、ホタルのように美しい発光をするイカであることから「ホタルイカ」と名付けたと言われています。

その後、ホタルイカの学名は博士の名前にちなみ「Watacenia sintillans(ワタセニア・シンティランス)」と命名されました。

ホタルイカの放つ光「冷光」

ホタルイカの発光は、発光物質(ルシフェリン)に発光酵素(ルシフェラーゼ)が作用することによって起こります。

この光は熱をもたないため「冷光」と呼ばれています。

昆虫のホタルの発光も同じしくみですが、発光物質や発光酵素の構造は異なり、その全容は現在でもまだまだ謎が多く、現在も研究が進められています。

ちなみに、釣りでよく使われる「ケミホタル」はシュウ酸ジフェニルと過酸化水素との混合溶液の化学発光によって蛍光を放っています。

光る理由

ホタルイカがなぜ光るのかは今もなお断定はされていませんが大きく3つあるとは考えられています。

身を守るため

ホタルイカは暗い海中で外敵に襲われたときなど光を発することで相手を驚かせたり、目くらましに使用していると考えられています。

身を隠すため

ホタルイカは海中では身体を水平にしているので、昼間は上から降ってくる太陽光に反応して腹側にある発光器から光を出します。

光が強すぎるとかえって目立ってしまうし、光が弱いとシルエットになり反対に敵に見つかりやすくなってしまうため、光を上手に調節して敵から見つかりにくくしていると考えられています。

会話するため

これは研究者の間でも賛否ある意見ですが、会話やコミュニケーションに使用しているというものです。

同じ発光器をもつイカの仲間でも、それぞれの発光器の数や配列、種類の組み合わせなどは微妙に違います。

ホタルイカの眼は青、水色、緑の3種の色を識別でき、同じ仲間同士やオスとメスとの間で合図を送ったり、集団で行動したりすることができると考えられています。

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