沖縄で漁のピークを迎えているアオリイカ。釣りのターゲットとしても人気ですが、沖縄ではちょっと変わった食べ方をすることを知っていますか?
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沖縄・読谷村でアオリイカが豊漁
沖縄本島中部に位置し、東シナ海に突き出す読谷村(よみたんそん)。村にある都屋漁港では現在アオリイカ漁がピークを迎えています。
読谷村では11月からアオリイカ漁が始まり、シーズンになると新鮮なイカを求めたくさんの人が集まります。今年も連日新鮮なアオリイカが朝から競りにかけられており、並べればすぐ売れるという状態だといいます。
例年に比べ今年のアオリイカの型も良く、水揚げ量も多いとのこと。これからシーズンが進むと漁獲量も増え、価格も安定してくるそうです。(『ピンク色に輝く海の幸 アオリイカが水揚げピーク 読谷村の都屋漁港、豊漁に沸く』琉球新報 2020.11.18)
アオリイカの特徴
アオリイカは大きいもので40cmほどになる、暖海系のイカ。大型で幅広であるひれの形と色が、「あおり」という馬具に似ているのが名前の由来です。地方名も多く、芭蕉の葉に似ていることからバショウイカ、透明感が強いためミズイカ、流れ藻につくためモイカなどとも呼ばれます。
スルメイカやヤリイカなどと比べると知名度は低いですが、甘みが強く身が厚いため寿司ネタにするには最高のイカです。筋肉中の遊離アミノ酸が非常に多く食味が良いため「イカの王様」とも呼ばれます。
沿岸に棲息し、貪欲な性質をしているため釣りのターゲットとしても人気が高いです。エギと呼ばれるルアーでの釣りや、生きたアジを餌にした釣りが全国で盛んに行われています。
沖縄の「墨汁」
アオリイカはどんな料理でも美味しいイカですが、価格が高めなので刺身や寿司で消費される事が多いです。しかし、アオリイカの水揚げと消費量の多い沖縄では、アオリイカを使った独特の汁料理があります。
それは、アオリイカのイカ墨を使った「墨汁」。旨味が豊富で独特な風味があるイカの墨をたっぷり溶かした汁でイカや他の具材を煮たスープです。コウイカ類など他のイカで作られることもありますが、アオリイカで作る墨汁は別格のものとも言われ、愛されています。
アオリイカの旨みたっぷりの墨で煮られた具材は旨味が濃厚なのに、味が柔らかく、いくら飲んでも飲み飽きることはありません。活けのアオリイカが手に入らないと作れない料理で、人々が直売所に殺到する気持ちもわかります。
墨汁を作るためには、イカの墨を無駄にするわけにはいきません。そのため、当地では、釣り上げたり網で獲られたイカが墨を吐かないように扱う技術があります。墨の噴出口をとめるクリップも販売されているほど。
沖縄の汁料理には山羊汁や骨汁などインパクトの強いものがたくさんありますが、この墨汁もそのひとつだと思います。
沖縄に訪問される機会があれば、食べてみてはいかがでしょうか?
<脇本 哲朗/サカナ研究所>