日本屈指のシシャモの水揚げ量を誇る北海道むかわ町。11月9日、今季のシシャモ漁が終了しましたが、かつてないほどの不漁に終わってしまいました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
むかわ町のシシャモが記録的不漁
北海道南部・胆振総合振興局にあるむかわ町。ここでは、町の魚にシシャモが指定され、町内を流れる鵡川にはシシャモが産卵のために遡上するなど、名実ともに「シシャモの町」です。漁業も古くから行われており、「鵡川のシシャモ」は日本一のブランドとして高い知名度を誇ります。
そんなむかわ町にある鵡川漁業協同組合では、今季も例年同様10月1日にシシャモ漁が解禁され、11月9日まで続けられました。しかし、その水揚げ高は例年と比べ非常に少なく、不漁が続いているここ数年の水揚げと比べても大きな減少となっています。
今季の総漁獲量はたったの3t程度となっており、これは不漁だった昨年の10分の1にも届かない数値だといいます。過去にないほどの記録的不漁に、漁業関係者は危機感を募らせています。
不漁の要因とは
不漁が続いていたむかわのシシャモは、2011~15年まで5年連続で総水揚げ高が30tを下回り、資源量減少が危惧されました。そのため資源管理の取り組みが行われ、その結果2016年以降は多少持ち直していたといいます。
そんな中、昨年の水揚げ高は約38.3tと再び50tを割ってしまっており、今季の水揚げがどうなるか心配されていたといいますが、前記の通りその不漁は想定を超えるものでした。今季の漁期中、1t以上の水揚げがあった日は1日もなかったそうです。
不漁の一因として、海水温が高かったことによりシシャモの接岸が遅れたのではないかという説が唱えられていますが、残念ながら現時点で詳細は明らかになっていません。
2年前、産卵のために鵡川に遡上したシシャモは推定87万匹いたと試算されており、本来ならば今年はその子が親になって戻って来るはずだったといいます。今後、研究機関による調査が行われる予定とのことです。(『むかわ シシャモ記録的不漁 漁獲量わずか3トン』苫小牧民報 2020.11.10)
「カラフトシシャモ」が主流
近年不漁が続き、値段が高騰しているシシャモ。しかしその割に、スーパーの鮮魚コーナーで、「子持ちししゃも」を当たり前に見かけることを不思議に思う人もいるかも知れません。
実は、いわゆる「子持ちししゃも」の殆どはシシャモではなく「カラフトシシャモ」という別の種類の魚なのです。
カラフトシシャモはほぼ全量が海外産で、年間2万tあまりが輸入されており、価格も安定的。そのため今ではシシャモといえばこちらを指すほどになっており、国産のシシャモは「本ししゃも」という名前で流通することが多くなっています。
カラフトシシャモも美味しい魚ですが、脂の乗ったオスのシシャモの味はこれを遥かに凌駕します。不漁の原因が解明されて資源量が回復し、安心して食べられるようになることを祈るばかりです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>