世界最大のサメであるジンベエザメ。ダイビングで人気が高く、南の海の魚というイメージがありますが、最近日本の近海にもしばしば姿を現しています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
日本海でジンベエザメの目撃相次ぐ
今月上旬、日本海に面する京都府丹後半島沖で、ジンベエザメが釣り人の前に現れ、話題となりました。大きさは7~8mほどあり、コバンザメがくっついた状態で、釣り船の周りをゆっくりと泳いでいたそうです。
また驚くことに、同じ日の午後には、ここから300km北東にある新潟県上越市沖でも同様にジンベエザメが目撃されたそうです。沖合の水深40mほどの場所で漁師によって目撃されたといいます。(『船の真下に「ジンベエザメ」! 暖かい海に生息するはずが…なぜ”秋の日本海”に現れたの?』ミント 2020.10.7)
地元の人達も「ジンベエザメを見るのは初めて」と驚きが隠せないようです。
対馬海流に乗り北上?
ジンベエザメは最大12m以上にもなる世界最大のサメ、かつ世界最大の魚です。温暖な海に棲息しダイビングで人気の高いジンベエザメですが、なぜ日本海で目撃が相次いでいるのでしょうか。
彼らはその大きさに見合わず、大きな口を開けてプランクトンを濾過して食べる、おとなしい性質を持っています。今回目撃された個体は、餌となるプランクトンを追いかけて日本海を通る暖流「対馬海流」に乗り、北上したのではないかと見られています。
今後秋の深まりとともに日本海の水温が低下していくことが予想されますが、それに伴ってジンベエザメも南下し、東南アジアの方に向かっていくのではないかと思われます。海の温暖化が進む中、今後はこのような目撃例も増えていくかもしれません。
かつては食べられていたジンベエザメ
さて、世界最大のサメであるジンベエザメは、そのヒレももちろん世界最大です。そのためジンベイザメのヒレは「世界最大のフカヒレ」として、中華料理の超高級食材として取引されてきた歴史があります。
食材としてのフカヒレは大きいほど価値があるとされ、ジンベイザメやウバザメなどの大型のサメのヒレは最高級品とされます。中でもジンベイザメのフカヒレは「天頂翅」と呼ばれ、100万円以上の値がつくこともあったといいます。(『フカヒレ1.5mの巨大ジンベエザメ、136万円の高値付く!―福建省福州市』レコードチャイナ 2007.9.14)
現在ではジンベエザメはワシントン条約に登録され、輸出入が厳しく制限されています。また中国でもフカヒレなど野生動物食材の取引を禁止するルールが制定され、今後はジンベエザメの捕獲は(表向きには)行われなくなる可能性が高いと見られます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>