フライお得帖:アワセ切れから手を切ろう クリンチ&パロマーノット編

フライお得帖:アワセ切れから手を切ろう クリンチ&パロマーノット編

フライの「難しい、高い」を「知る、工夫する」で解消しましょう。ミステリー小説家でもある筆者が解き明かすフライの謎と秘訣。今回は、アワセ切れから手を切るための「クリンチノット」と「パロマーノット」を紹介。

(アイキャッチ画像提供:WEBライター・浅暮三文)

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浅暮三文

浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)小説家。第八回メフィスト賞、第56回日本推理作家協会賞を受賞。日本推理作家協会、日本文芸家協会員。産経新聞書評担当。

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ルアー&フライ トラウト

フライは「難しい・高価」?

これからフライフィッシングを始めようとする方、始めたばかりの方へ。フライは「難しい、高価」と思われていませんかね。かれこれ30年近くフライをやっている私もフライの専門用具は「高い」と思うし、専門雑誌は「難しい」と感じることがしばしばです。ましてやタイイングはいわずもがな。

とはいえフライフィッシングも所詮は釣りです。他の釣りと大差ない部分が多いのも確かなはず。そこで自戒と再勉強を含めて手軽に安価にフライを楽しむために雑文を起こすことにしました。かくいう私も万年初心者。ご一緒に賢い釣り師、賢い消費者を目指しましょうよ。第1回は釣りでもっともガッカリする「アワセ切れにどう対処するか」です。

ティペットは安い海用を

釣りでもっともガッカリするアワセ切れは、糸の一番弱いところに力が掛かるからですよね。フライで多いのがティペット(ハリス)とフライとの結束点となるのは、ご存知の通り。切れるときは、なにがどうなったのか理由はあるにせよ、後の祭りだから、大前提として賢い釣り師はティペットを量販店にある海用の釣り糸で安く済ませましょう。すべてのフライ用具のメーカーがナイロン生産工場を持っているわけでもなく、近代科学のおかげで品質はほとんど変わりません。

ここに掲載したのは、一般のハリスの号数とフライでのエックスとの比較です。すべて記憶せずとも5エックス~7エックス、0.8、0.6、0.4号と頭に入れておけばいいでしょう。

フライお得帖:アワセ切れから手を切ろう クリンチ&パロマーノット編ハリス号数表(作図:WEBライター・浅暮三文)

海外ではエックス(数字が大きくなると細くなるのは糸に%をかけているから)あるいはミリで表示されるハリスの太さが、なぜ日本では号数で表示されるのですか(とメーカーに問う)。

それは昔の天然糸の太さの最小単位である厘=約0.165mmを国産初のナイロン製を販売する際に1号と定めたのが今も受け継がれているから(との答)。そろそろ統一してもらいたいものですな。表のLBとはLibra=重量ポンドの略で強度のことでござんす。

フライは強く結ばない

さてアワセ切れするのが大前提とはいえ、やはりそれをなんとかしたい。これはすべての釣り師の願いです。そこでフライとティペットとの結束部分をどんな結びにするか。多くのフライフィッシングの入門書にあるのは図のようにクリンチノット、インプルーブド・クリンチノットでしょうか(前者はハリ穴に糸を通し、できた輪に一回通す。後者は二回。図にあるオスマーク=♂は毛バリ)。

フライお得帖:アワセ切れから手を切ろう クリンチ&パロマーノット編クリンチノット、インプルーブド・クリンチノット(作図:WEBライター・浅暮三文)

どちらのクリンチを選んでも、秘訣となるのはフライのハリ穴と結束部に輪で隙間を設け、わざと「ゆるめ」に結ぶことだそうです(フライが抜けない程度)。ティペットも数mmほど残しておく。

フライお得帖:アワセ切れから手を切ろう クリンチ&パロマーノット編わざと隙間を作るのがミソ(提供:WEBライター・浅暮三文)

こうすると魚との引っ張り合いに隙間の輪が仲介役となり、ハリスが滑って結ばれ、魚の引っ張る力をしぼませてくれるのです。獲物を逃がしたくない一心から、ついついハリとハリスをしっかり結びがちですが、釣りも世の中も「いいかげん」が、ほどよかったりします。

またアワセ切れは必ずしもティペット部分とは限りません。糸に力が掛かると切れてしまう弱いところは、ティペットとリーダーの結束部分も同じです。ここもまたしっかり結ばずに「そこそこ」にしておくと無責任が責任を果たしてくれます。

力を分散するノット

さてここまでは通常のフライとティペットの結束方法でした。とはいえ、これでは今まで通り。なんだか不安ですか。私もそうでした。そこで異なるノット(結び)の登場です。まずはタイニー・アジャスタブル・ループノット。なんとも長い名前ですが、別名をエスキモーノット(英文ママです。差別的とは思わないでね)ともいい、米国の釣り師ジョン・ベッツが使うノットであります。

結び方は図の通り。クリンチと同様にフライとティペットを2~3mmの小さな輪でつなぎ、結び目を一つ目、二つ目と作ります。結果、ハリスはハリ穴、輪、二つの結束部で力が分散して安心。しかも輪があるのでフライとティペットとの自由度が高く、毛バリに強制力が働かない。つまり水中、水面上でも自然な状態を維持します。

フライお得帖:アワセ切れから手を切ろう クリンチ&パロマーノット編タイニー・アジャスタブル(作図:WEBライター・浅暮三文)

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