日本最北の海・オホーツク海で、あのクロマグロが釣れているというニュースが話題に。さらには暖海魚シイラも北海道の海を回遊しているようです。原因は何なのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
北の海でクロマグロが好調
北海道の中心である札幌から車で1時間20分ほどのところにある、後志総合振興局・「古平町(ふるびらちょう)」。日本海に突き出る積丹半島の付け根に位置し、観光都市として名高い小樽のすぐとなりでもあります。
いま、この古平町の沖合の日本海では、なんとクロマグロ狙いの遊漁船が日々出船しています。南の海を広く回遊するイメージのあるクロマグロですが、古平沖では2年前からコンスタントに釣れており、ときに50kg近いものも混ざるとのこと。30kg未満はリリースというルールもある中で、多くの人がキープサイズを仕留めているといいます。
またそれだけではなく、さらに北のオホーツク海でも、10kg程度の小型のマグロが回遊しており、群れで餌を追う姿が目撃されているといいます。(『海の異変…オホーツク海にもマグロの群れが!シイラも北の海に 北海道』北海道放送 2020.9.12)なぜ、北の海にマグロが増えているのでしょうか。
なぜ北の海にマグロが?
北海道では、8月のお盆あたりから気温が非常に上がり、ときに全国屈指の暑さを記録してニュースに取り上げられるような日もありました。その結果として、北海道周辺の海域では、海面水温が非常に高くなってきているといいます。
クロマグロの場合、海面水温が16~22度あると回遊すると言われているのですが、今年の北海道周辺の海水温はほぼ全域がこれに当てはまります。
その結果、クロマグロ自体の回遊に適しているのみならず、エサとなる小型のブリも多く回遊するようになり、それを追って多くのクロマグロが北の海を回遊するようになっているのではないかと考えられています。
どんな影響を受けるか
水温の上昇によって姿が見られるようになった魚はクロマグロだけではありません。古平町の遊漁船では、ときに南の海の申し子とも言えるシイラの釣果も見られるようになってきたそうです。
その一方で、もともといた魚介が減ることも懸念されます。近年、北海道の主要漁獲物であるイカ類の不漁が続いていますが、これも海水温の上昇が一因であると指摘する声があります。
温暖化の進行を防止するため様々な手が打たれていますが、それでもこのような変化は一朝一夕に止められるものではありません。現状を冷静に把握し、漁獲物の変化に対応し、漁場や漁法の見直しをしていくことも、必要になってきているのかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>