2020年の秋の『サンマ漁』が解禁 昨年以上の不漁予測で今後に不安

2020年の秋の『サンマ漁』が解禁 昨年以上の不漁予測で今後に不安

日本の秋を代表する食材のサンマ。ここ数年は価格の高騰が続き、生サンマは高級魚になりつつあります。今年の漁もスタートしましたが、状況は芳しくないようです。

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秋のサンマ漁が解禁

8月10日、北海道で小型船によるサンマ棒受網漁が今年も解禁されました。棒受網漁は日本におけるサンマ漁の中心となる漁法で、ライトでサンマを網の上に誘導して漁獲するというものです。

出船基地はサンマ棒受け漁水揚げ日本一の根室・花咲港を中心に、道東の漁港が多くなっています。この時期の漁場は北太平洋・ロシアの水域が多いのですが、秋の深まりとともに日本近海に近づいてくるといいます。

小型船に引き続いて中型・大型船の漁も順次スタートし、秋の風物詩であるサンマ漁が本格化しています。(『不漁が続く中…サンマ棒受け網漁 小型船が出漁』HBC北海道放送 2020.8.12)

昨年を下回る「大不漁」予測

そんな秋のサンマ漁ですが、近年は大不漁に見舞われています。昨年2019年の水揚げは、前年2018年の3割程度となる4万トンに過ぎませんでした。これは過去最低の水揚げ量となります。

しかも水産庁の予測によると、今年2020年はその2019年をも下回ると見られ、記録的な不漁になる可能性が高いといいます。(『不漁が続く中…サンマ棒受け網漁 小型船が出漁』HBC北海道放送 2020.8.12)

2020年の秋の『サンマ漁』が解禁 昨年以上の不漁予測で今後に不安水揚げ量は右肩下がり(提供:PhotoAC)

続く不漁について、その原因を気候変動による海水温の異常や、日本ならびに周辺国の乱獲に求める声なども多くなっていますが、残念ながら現状のところ理由ははっきりしていないようです。

迷走する日本のサンマ漁

今後も秋の味覚であるサンマを楽しむために、できることはないのでしょうか。一般的に考えれば、他の不漁魚介類への対策と同様に「漁業量の調整」「禁漁」「漁期の短縮」などを行えばよいのではと思いますが、現状はむしろ真逆の方向に進んでいます。

記録的な不漁であった2019年ですが、実は小型船の漁が解禁される前に中・大型船による漁が始まっていました。なぜこのようなことが起こったのでしょうか。

実は、中国や台湾などのサンマ漁を行う周辺国は日本沖の公海で5~6月にサンマ漁を行っており、日本の漁船がそれに歩調を合わせることができるよう、農林水産省がルールを変更し「通年操業を可能にした」ためだったのです。

2020年の秋の『サンマ漁』が解禁 昨年以上の不漁予測で今後に不安品質が良ければよいのだが……(提供:PhotoAC)

「夏サンマ」の食味

ある意味「横紙破り」を行ってまで漁獲された「夏のサンマ」ですが、残念ながら期待されたような売上には繋がりませんでした。そもそも秋が深まるほどに日本近海に下り、脂を持つようになるのがサンマという魚。初夏に沖合で獲れたサンマはどうしても脂の乗りが悪く、味も劣っています。

さらに日本では「サンマは秋の味覚」というイメージが強く、初夏に獲れたものに対して流通・消費者サイドが価値を見いださなかったのです。入荷を見送った漁協も少なからずあったといいます。(『大不漁のサンマ、出漁「前倒し」で魚のプロたちがそっぽを向いた理由』現代ビジネス 2019.7)

危機に陥る「サンマ食文化」

また、通年操業解禁の結果、本来の解禁期であった秋の小型船漁サンマの値崩れも発生してしまいました。

水産庁によると、近年では公海を回遊するサンマが日本近海に近づくことが減っているといい「通年操業が、近海サンマ資源量に悪影響を及ぼす可能性は低い」とのこと。しかし、現状のサンマ漁の危機を見る限りは、今後については再検討が必要ではないかと感じられます。

2020年の秋の『サンマ漁』が解禁 昨年以上の不漁予測で今後に不安鮮魚のサンマは幻になるかも(提供:PhotoAC)

いつかまた、脂のたっぷり乗った新鮮なサンマが、我々庶民でも気軽に口にできるようになればいいのですが…。現状ではその見通しは立っていないと言えるでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>