冬が旬とされるカワハギですが、実は夏から秋にかけても美味しい時期を迎えます。冬のものとは魅力が違う「夏のカワハギ」、ちょっと変わった調理法でも楽しむことが可能です。
(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)
カワハギの魅力は肝?
おちょぼ口が可愛らしいカワハギ。ちょっと間の抜けた表情からは想像できない上品な味わいと釣り味の良さから、沢山の人に愛されているサカナです。
その美しい身はフグの代用にもなり、淡泊ながら素晴らしい味わいが楽しめるのですが、それでもやはりカワハギの最大の魅力は、大きく肥大する肝(肝臓)です。
カワハギの肝は「海のフォワグラ」とも呼ばれ、アンコウの肝と並んで珍重されています。秋の終わりから冬にかけてはとくに肝が大きくなり、この時期の活け締めのカワハギはときにキロ5000円近い高値がつくこともあります。
釣りの旬は夏
その一方で、カワハギの「釣りの旬」は夏から秋。
水中でホバリングができるカワハギは、その小さな口で釣り針から上手に餌をかすめ取る「餌泥棒」のため、他の魚と比べて釣りの難易度が高く、本来は上級者向けのターゲットです。
しかし、春から初夏にかけて産卵を行うカワハギは、産卵で落ちた体力を取り戻すべく、夏から秋にかけて盛んに餌を摂ります。そのためこの時期のカワハギは、初心者でも比較的簡単に釣りあげることができるのです。
またこの時期は大型も盛んに接岸し、磯場や堤防に付着する貝や甲殻類を積極的に食べます。そのため身近なポイントで驚くほどの大物が釣れることがあり、楽しむことができます。釣りやすさ的にもサイズ的にも、夏はカワハギが良い季節なのです。
「皮付き」で調理するのも一つの手
その一方で、どんなに釣りやすくても、やっぱり食味は重要。とくにカワハギのような高級魚を釣るときは、アフターフィッシングのほうが楽しみが大きいという人も多いでしょう。
実際のところ、夏のカワハギは決してまずいということはありません。とくに盛夏から秋口にかけては体力も戻り、身がパツパツに張るほどになります。しかしやはり肝の大きさでは冬のものと比べると見劣りがするのは否めません。
こういうカワハギを食べるとき、オススメしたいのが「皮付き調理」。
カワハギの皮は紙やすりのように強靭で包丁の刃も立たず、どんな風に調理しても、皮が食べられるようにはなりません。そのため一般的には調理の前に予め剥いでおきます
しかし、その強靭な皮を逆手に取り、あえて剥かずにそのまま加熱をすることで、内部の水分を残したまま調理することが可能となります。これを活かし、カワハギをまるごとグリルや直火で焼いて「蒸し焼き」にすると、しっとりと仕上がり、カワハギの身そのものの美味しさを堪能することができるのです。
丸焼きにすることで肝の脂が溶け出してしまいますが、溶けた肝を身に絡めて食べるのもまた一興です。
ただ、皮付きだと身に味を付けることはできないので、焼けてから皮を剥ぎ、そこに好みでポン酢や生姜醤油などをかけて食べるのが良いでしょう。
夏のカワハギは価格も安く、活け物でも手軽な値段で購入できることがあります。この食べ方なら肝の詰まった「肝パン」個体でなくても楽しむことができるので、ぜひ試してみてください。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>