スーパーで見ない日はないブリ。日本でもっとも重要な魚介類であるブリは養殖量もトップクラス。そして、その味わいも他の養殖物とは一線を画しています。
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養殖の先駆けとなった「ブリ」
日本でもっとも愛される魚介のひとつ、ブリ。年間を通して高い需要があり、スーパーでいつでも購入することができます。これだけの流通量を天然物だけで賄うことは不可能であり、全国で養殖が盛んに行われています。
実はブリは、我が国における海面漁業養殖の先陣を切った魚であり、現在では魚類の養殖生産量の実に半分以上を占めています。(『養殖業の現状と課題について』水産庁 2013.2)養殖業界では「ハマチ」と呼ばれることも多く、市場では天然物をブリ、養殖物をハマチと呼び分けることもあるようです。
今ではブリの総生産量の56%が養殖物となっており、市場を支える存在なのです。
安い・美味い・安定の三拍子
そんな養殖魚としての歴史も長いブリですが、かつては養殖のブリといえば「粗悪な養殖品」のイメージが強くありました。「養殖魚は臭い」「脂が悪い」と言われることも多く、現在も少なからぬ人が抱いている「天然魚至上主義」をもたらす原因になったと言っても間違いではないでしょう。
ブリに限らず、魚の食味は食べたものに大きな影響を受けます。そのため養殖ブリの臭みは飼料に影響しているものと考えられ、養殖業者は飼料を工夫することでこれらの欠点を克服してきました。研究や工夫の結果、飼料に柑橘類など植物性のものを混ぜると、含まれるポリフェノールによって脂の臭みを抑えられることなどが判明し、いまでは多くの現場で用いられています。
ブリの魅力はやはりたっぷり乗った脂。夏に脂が落ちる天然ものと違い、養殖物の脂は年間を通して安定しているため、脂の質が良くなれば養殖ブリの需要は高まります。結果として現在では、養殖のほうが高い値がつくこともあるようです。
養殖と天然の見分け方
とはいえ、用途や好みによっては天然物のブリが必要になることもあるかと思います。そのため、見分ける方法を知っていても損はありません。
養殖魚の多くは外見で天然と見分けることができますが、ブリのような大型魚は基本的には切り身で流通するためそれができません。ただブリの場合は前述の通り、養殖物は年間を通して脂が乗り、身が白っぽくなっています。
天然物も冬になると脂がたっぷりと乗るため判別は難しくなるのですが、夏の時期は脂が少なく赤っぽい色合いになっているので、多くの場合、判別は容易でしょう。
味わいも見た目同様、養殖物はこってり、天然物はさっぱりしています。好みで使い分けるのが良いでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>