大阪湾には沖堤防、一文字と呼ばれる、渡船を利用して渡る釣り場が多数存在する。今回は、沖堤防での釣りが大好きな著者が「神戸・第8防波堤」を紹介しよう。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・伴野慶幸)
実釣レポート
梅雨の晴れ間となった7月5日、神戸港東エリアの中から選んだ釣行先は第8防波堤。朝のうちはサビキで中アジを狙ってお土産を確保し、食い止んだら落とし込み釣りでのチヌ狙いに挑戦する二本立ての作戦を立てた。
利用したのは松村渡船。前日23時半ごろに乗船場に到着した時には、正に目の前で始発便が1時間半の前倒しで出船していた。前日の大雨も何のその、ルアーマンとタコ釣りの人たちが多く訪れていた。
現場指揮に操船に受付にと忙しい中でも、合間を見つけて的確な情報をくれる松村船長に寄せられる釣り客からの信頼は厚い。中アジ狙いの私には「8防北側から水道(8防と6防との間の航路)を狙ってみたら確率は高いのではないか」とアドバイスしてくれた。そうこうしている間に1時となり、私を含めて40人弱の釣り客を乗せて結果的に第2便となった船は出発した。
釣り場とタックル
今回釣行した神戸第8防波堤は、ポートアイランドの東側に位置する南北400mほどの防波堤。神戸港港湾計画による航路拡張のため、数年以内の完全撤去が決定しており、波止の南端の先には立ち入り禁止の柵が設置されているが、残存している部分でも十分な広さが感じられる。足場がよく、海面からの高さも4m余りと安全で、回遊魚、根魚、ヘチ・落とし込み釣りでのチヌと釣り物が豊富な好釣り場として、今なお多くの釣り人に親しまれている。
中アジ狙いのサビキ釣りは、サオ下狙いとウキサビキの2種類のタックルで挑んだ。サオ下狙いのほうは、磯ザオ5号5.4mに、ミチイト4号を巻いた両軸リールをセット。ウキサビキのタックルは、軟らかい投げ釣り用のサオにスピニングリール、ミチイト6号に遠投サビキ用の20号遊動ウキをセットしたものだ。
2種類のタックルに共通するのは、まきエサカゴはサビキの上下それぞれに付けるダブル方式で、上カゴとサビキの間にクッションゴムを介した点。上下からまきエサをサビキの周りにまとわせて連掛けを狙い、巻き上げの際にはテンションを極力少なくしてバラシを避けるという工夫を施している。
サビキは6号バリにハリス1.5号のサバ皮サビキをクッションゴムの下にセットするとともに、下カゴのテンビンの先にはハリス2.5号に煌き加工を施したホログラムバリの2本バリ仕掛けを接続した。さらに、良型のアジやサバも拾えればと、マイクロベイトに似せた最小サイズのワームをサビキバリ2か所とホログラムバリ1か所に刺し、アクセントとした。
5時半ごろに1匹目の中アジがお目見え
船内のうち8防目当ての釣り人は10人近くいて、先客も合わせると最終的に8防の釣り人は30人余りにのぼったが、幸いにも私は船長からのアドバイスがあった波止の北端に釣り座を構えることができた。タックルの準備ができた後は、隣の釣り人とマスク越しにしばし言葉を交わしてから、しばしゴロ寝して夜明けを待った。
4時ごろからようやく本気を出してサビキ釣りをスタート。8防と6防との間の通称「水路」に、サオ下狙いのサオと、投点20m弱の近投でのウキサビキザオの2本を出して、アジの反応を待つ。周りを見ると、東向きにサオを出している釣り人が多い。すると周りでいくつもの声かあがった。しかしそれは残念ながら、あまり歓迎されない小サバの釣果だった。
5時半ごろにようやく、近くの人が先陣を切って中アジを釣り上げた。それに続いて、私のウキサビキのザオでもウキがズボっと沈んだ。魚の確かな手応えを感じながら慎重にリールを巻き上げると、カゴテンビンの先のホログラムバリに中アジが掛かっていた。慎重に抜き上げて1匹目の獲物を手にすることができた。去年の冬場に波止を賑わせたデカアジとまではいかないものの、20cmはゆうに超えている中アジには頬が緩む。大切な獲物はスカリに入れて活かしておくことにした。
小サバの猛攻をかわしての中アジ拾い
引き続き追釣を狙うが、一方では海面がバシャバシャ波立つほど上層にわく小サバの群れには多くの釣り人が悩まされていた。中アジのタナは底だが、多くの人は一般的な軽量のプラスティック製のアミカゴを使っていたので、底のタナに辿り着く前に、上層の小サバにつかまってしまったようだ。その点、私の上下ダブルカゴ方式は、アミエビを詰めた下カゴがかなり重くなるので、小サバを比較的かわして底までサビキを沈めることができる。
中アジの群れは散発で、その利点はなかなか効果を発揮できなかったが、サオ下狙い、ウキサビキの2本のサオには、はっきりとした優劣はなく、群れが回ってくればどちらかのサオで辛うじて1匹は拾えるという展開になった。
周りで一番釣果を重ねていたのは、近くで東向きにサオを出していた人。「サビキは太めがええな」と話したように、その人はハリス4号の大アジ対応の太仕掛けのサビキを用い、テンビンカゴの先にも2本バリ仕掛けを接続していた。小サバの猛攻にボヤく一幕もあったが、粘り強くこまめに打ち返しながら、アジの群れが回ってくるルートを上手くとらえていたようで、中アジの二桁釣果を手にしていた。たかがサビキと言うなかれ、釣る人は何かが違うと改めて実感した。
カタクチイワシの群れが到来
依然として中アジの群れは散発だったが、6時半ごろから小サバの他にも、新たな難敵(?)が到来した。カタクチイワシの群れだ。上層の小サバはある程度回避できていた私だったが、底のタナで掛かってサオ先を震わせるカタクチイワシは避けようがない。
最初こそ釣れてもリリースしていたが、あまりにも掛かってくるので、唐揚げや煮付けにすると小サバよりもおいしく食べられる魚だと、頭を切りかえて海水バケツにキープすることにした。サビキ釣りは7時半ごろに終了。最終的には中アジ5匹、カタクチイワシ約20匹の釣果となった。
落とし込み釣りは不発
サビキ釣りの終了後は、チヌ狙いの落とし込み釣りに切りかえた。2時間余り、波止際の壁面を探り歩いたが、引き込みアタリを逃してエサのイガイを割られ、貴重なワンチャンスを逸してしまったのが運の尽き。チヌの釣果を上げることはできず、またのリベンジ釣行を誓って11時に納竿し、迎えの便に乗り込んだ。
乗船場に付くと、釣果に恵まれた釣り人たちが残って船長に報告。全体的にはルアーはダメだったが、中アジとタコは2ケタ釣果の人もいて、ポイントや釣り方で明暗が分かれたようだった。
帰宅後、夕食の食卓には、中アジの塩焼きとカタクチイワシの生姜煮がお惣菜として彩を添え、家族揃っておいしくいただいた。
<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>