梅雨の雨と言えば「シトシト」だったはずが、土砂降りもしょっちゅうに感じる。そんなうっとうしい雨にも、釣りにとって歓迎すべき変化をもたらしてくれる場合がある。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)
晴れ予報の釣行が最高?
釣行予定日の天気予報。アナタはどんな予報ならワクワクしますか?もちろん、晴れ、快晴なんて言葉を聞くと、爽快に釣りができるだろうし、レインウエアの持参なども不要なので荷物も減る。
対して、大雨なんて予報なら、気が重くなったり「いっそやめちゃおうか」なんてことにも。では、曇天は?晴れるかもしれないし、雲が広がるので雨が降るかもしれない。
ま、釣りのジャンルにもよるが、釣行日の雨降り予報は、気が重くなる人も多いはず。そんな雨に関する心配事が増えるのが梅雨時期の釣行である。
雨は降り方が全て
梅雨の雨といえば、小雨をメインとしてシトシトと降り続くイメージだが、今年はなぜか、すでに災害級の大雨も記録していて、「ホンマに梅雨か?」と思わせられるような梅雨の初期だった。
「観測史上○番目の大雨」なんて日から以降はしばらくの間は、河川からの濁流が流れ込み、海でも濁りと水潮が入り込んで、元々海にいるサカナたちは一気に逃げるか、隠れるか……といった感じだろう。
その雨は、降り方によっては釣りにも好影響を及ぼしてくれる。まさに「恵みの雨」となる場面が存在する。今回は「雨はイヤ」とばかりいってられない梅雨時期に、雨を歓迎できる状況を挙げてみたい。
1.濁りが警戒心を解く
陸地に降った雨が川へと流入し、その量が多ければ陸の泥などと一緒に濁った水となり、酷い時には濁流となる。濁流は水面下の透明度を著しく下げるので、魚にとってはエサも見えないし、それどころか泥水によって生命の危機となる。釣り人にとっては濁流時は増水や鉄砲水など、危険だらけな状況なので、釣りには向かない、というよりも、水辺には近づいてはいけない状況だ。
笹濁りは好条件
しかし、適度な雨で少しの濁りが入る程度なら、釣りの状況としてはよくなることが多い。透明度がやや下がる程度の状況なら、捕食者であるフィッシュイーターなどの魚にとってはエサへのアプローチがしやすい。また、濁りによって、魚から人を確認し辛いので警戒心を低くすることにつながる。川でいう「笹濁り」状態は、アユやアマゴなどの川魚を釣る上でも好条件となる。
これは海でも同じで、あまり海釣り用語では「笹濁り」とは使わないが、同様に「ちょっと濁りが入っているな」という状況下では、魚がエサに近づきやすく、人を認識し辛い、釣りをする上では好条件となる。
2.川から栄養源が流入
雨による河川の流入水の中には、陸地にある栄養素が多分に含まれる。この栄養源は魚に自体には直接影響することは少ないが、これらミネラルなどを摂取して植物プランクトンが増えることで、それらをエサをする動物プランクトンも増える。また、イワシなど魚類の中で食物連鎖の底辺近くに位置する小魚が動物プランクトンを食べるので、活性も上がる。
さらには、それらの小魚をエサとする中型魚、大型魚の活性も上がり、全体として海域の活性が上がるので釣果にも響いてくるという訳だ。
ただし、栄養素が多く入った後に、急に晴れた日が続くと栄養素を豊富に取り込んだ植物プランクトン、そして動物プランクトンが異常繁殖し、その結果が「赤潮」となって海としては最悪の環境を生み出してしまう。栄養素の流入も程度モノである。
3.海に変化をもたらす
夏頃に快晴の日が続くと、海に変化がなくなり、さまざまなターゲットの活性が下がってくることがよくある。そんな時に釣り人がよく使う言葉が「ひと雨欲しいね」である。雨は海に変化をもたらし、変化がないために活性が下がっていた魚の活性を上げることを釣り人は知っているのだ。
アユのトモ釣りが明確
極端な例がアユのトモ釣りである。トモ釣りは石に付いたコケをはむアユがよいコケの付いた石周りを自分のナワバリとしてエサ場を守る習性を利用した釣りだ。雨がなく、川が安穏と流れ続くと、コケが石に付きすぎてアユが食べる量よりも繁茂する方が早くなる、結果として、古いコケが大量に付いてしまい、枯れてしまう。これを「アカぐされ」と呼んで、そんなコケ=アカはアユが食べない。
そこで、雨である。雨で増水すると上流からの土砂などの砂成分が流れてきたり、石を転がしたりして古くなったコケをきれいに取り除いてくれる。水が引けば新鮮なコケが付き始め、それを食べるアユも活性が上がる仕組みだ。
アユのトモ釣りだけではなく、海の中でも雨が降ることにより塩分濃度が変わったり、また落ち着いたりすることでいろいろな条件がリセットさせる。