酒匂川は静岡県と神奈川県を越県して流れる流程46km、流域面積582平方キロメートルの二級河川だ。アユの魚影の濃さには定評がある。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース特別版 APC・藤崎信也)
酒匂川の概要
酒匂川は静岡県内では鮎沢川と呼ばれ、流れが神奈川県に入ると、山北町、南足柄市、松田町、開成町と東進し、流れを南へと変え、大井町、小田原市を経由して相模湾へと注ぐ。玄倉川、世附川などの源流域は渓流釣りで人気。箱根山北麓を水源とする狩川は規模が大きく、中流域まで鮎の遡上があり、アユ釣りも楽しめる。
同河川の特筆すべき点は、至便性と釣りやすさ。中流域では東名大井松田IC、下流域では小田原厚木道路小田原東ICから10分で河川敷。都内から釣り場まで約1時間。また、川沿いにはJR御殿場線や小田急小田原線が通っており、電車での釣行も可能。
大雨が降ると暴れ川となって水害に悩まされるが、普段は大人しい河川。静岡県境の山北町内から小田原市の河口までの流程約20kmにはオトリ店が多く、さまざまな流れが点在。多くの釣り人を収容できる。また、毎年100万尾以上の放流を行っており、天然遡上もあり、魚影は非常に濃い。
主なアユ釣り場
主なアユ釣り場は、山北地区、松田地区、小田原地区、そして支流の狩川に分けられる。
山北地区
山北町内にある山北エン堤が魚止めになっていて、それより上流は天然遡上はなく、放流魚主体の釣り場。清水橋下流で本流筋の鮎沢川と丹沢湖からの流れの河内川が合流。河内川にある神縄エン堤とローリングダムの区間がその放流魚主体の釣り場に当たる。
このエリアには東京電力嵐発電所があり、揚水発電しているため水温が高く、解禁初期から型がいい。大石が多く、水清くロケーション抜群。都会の喧騒を忘れて釣りができる。
山北堰堤より下流は、足柄橋、高瀬橋、岩流瀬橋、新大口橋と橋周辺の好ポイントが続く。日照りが続くと減水して釣りにくいが、大石が多いため出水後は残りアカが多く、大水後に強い。
松田地区
松田町内は、上流から文命床止工、新旧十文字橋、足柄大橋、足柄紫水大橋、報徳橋と続く。新十文字橋上流から栢山頭首工までは、もっとも人気の釣り場。いつ入川しても満員御礼状態。足柄大橋上流の左岸からは川音川が合流、流れが複雑でポイントは多い。
高速のICや駅から近くアクセスがいい。周辺には4軒のオトリ店があり、コンビニやトイレが多いのも嬉しい。急瀬釣り派には物足りないかもしれないが、適度に流れがある瀬が連続して、ポイントは分かりやすい。
小田原地区
小田原市内は、報徳橋、富士道橋、富士見大橋、酒匂川橋(小田原厚木道路)、飯泉橋と続く。川の勾配は緩やかで底石は拳大から頭大で、平瀬やチャラ瀬が続く。
ここでは泳がせ釣り中心になる。オトリをゆっくりと上流へと泳がせると、目印が5mも吹っ飛ぶようなアタリが出ることも少なくない。護岸ブロックや豆腐石などの人工物にも魚は着いているので、ていねいにオトリを泳がせながら探る。小田急小田原線が川沿いに走っているので、電車での釣行も可能だ。
狩川
支流の狩川は、飯泉橋上流で酒匂川に合流する支流で、遡上の多い年には、川が真っ黒になるほど魚がいる。コロガシ釣り中心の釣り場だが、遡上の多い年は数釣りが楽しめる。
最後に
上流域では引き釣り、下流域では泳がせ釣り主体の河川。そのため場所によって竿や仕掛けが異なるので、どちらにも対応できるように用意する。
解禁前の放流に加え、釣れ具合によって追加放流もある。中期から終期には遅れて遡上した魚がオトリを追うようになる。魚影が濃い川なので、台風や集中豪雨がない限り、シーズン通して楽しめる。
過去には河川復旧工事のため土砂流入による不調の時期もあったが、今ではそれを脱し、往年の輝きを取り戻しつつある。砂が舞う川なので、大水後の回復の遅さが難点だが、それを除けば県内一の河川だ。
<週刊つりニュース特別版 APC・藤崎信也/TSURINEWS編>