以前「海の生き物たちにとっての「海のオアシス」サンゴの重要な役割を解説」で、サンゴが様々な生物に対して、どのような役割を果たしているのか解説しました。そんな中、サンゴは年々減少しているのも事実です。その主な原因と私たちがこれから先、サンゴにできることとは何なのでしょうか。
(アイキャッチ画像出典:PhotoAC)
サンゴを食べる生き物『オニヒトデ』
みなさんは「オニヒトデ」という生き物をご存知でしょうか?
サンゴ礁に生息するヒトデの仲間で、見た目はウニのようにトゲトゲした形態をしています。
彼らはサンゴを主食にしており、近年、彼らの大発生によるサンゴの食害が問題視されています。
本来はミドリイシ類やコモンサンゴ類等の比較的成長の早いサンゴを好んで食べていたため、あまりサンゴの個体数に影響がないとされていました。
しかし、食欲旺盛なオニヒトデが大発生したため、上記のサンゴ類だけにとどまらず、成長の遅いサンゴまでも食べるようになってしまいました。
『オニヒトデ』が大発生
沖縄のサンゴ礁では通常 1ヘクタール(100×100m)あたりを15分間遊泳しながら確認できるオニヒトデの匹数は1~5匹くらいとされています。ちなみに1ヘクタールは、だいたい陸上競技場の大きさです。
この程度の生息密度であれば、サンゴが成長するスピードの方がオニヒトデが食べるスピードを上回っているため、サンゴは減少しません。
しかし、これが大発生すると確認される数は10匹を超えるようになります。
数字だけを見れば、倍になっただけですが、15分の遊泳で観察できるのはせいぜい1/4ヘクタール程度なので、広大な海で考えた場合、オニヒトデの数は計り知れないことがお分かりいただけると思います。
1匹のオニヒトデは1年間に5~13平方メートルのサンゴを食べるといわれています。
サンゴ礁は今も少しずつ、そして確実にオニヒトデによって減少しているのです。
現在の沖縄県の対応
いま現在、沖縄県では、「酢酸を注射する」「砕く」「陸に上げる」「袋に詰める」などの方法でオニヒトデの駆除が進められています。
しかし、やみくもに駆除するのではなく、価値のある「守るべきサンゴ群集」の保全することを目的としています。
オニヒトデの大量発生は、多くの場合、数年で全てのオニヒトデを駆除しきったわけではないのに急に個体数が減って終息します。
この駆除では、大漁発生がストップするまでの間、「守るべきサンゴ群集」のオニヒトデを一定の密度以下に抑え込むというもの。
こうすることで、「守るべきサンゴ群集」は美しく維持され、オニヒトデも絶滅させることなく、減らすことができるようになります。
オニヒトデの活用法が課題
オニヒトデは単に駆除されるだけでなく、今後どのように利用するかが私たち人間の課題と言えます。
最近では、オニヒトデの分泌液がサカナの成長を促進させる効果があることが分かり、養殖業などへの二次利用に活用されています。
また、鹿などによる獣害への対抗策にも利用されているようです。
その方法はなんと「ただ置くだけ」というもの。
ヒトデ類に含まれる『ヒトデサポイン』という物質が獣避けになるようなのです。
せっかく大量発生している今、どのように有効活用するかは私たち人間次第です。
美しいサンゴとそれに関わる全ての生態系を守ること。そして駆除した生き物をどう扱っていくのかを考える。
これこそが私たち人間の使命なのではないでしょうか。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>