日本は世界でも有数の漁業大国であり、各地で様々な方法漁が行われている。今回、三宅島でマグロの延縄(はえなわ)漁をしている若き漁師、池田大純(いけだひろずみ)さんに話を聞いた。なぜ延縄漁を行っているのか、延縄漁とはどういった漁なのか、その実態について紹介。
延縄漁を始めた理由
池田さんが延縄(はえなわ)漁を始めようと思ったのは今から10年ほど前。
運命の出会いは、父親が漁師をしており、ひょんなことから漁の手伝いのために船に乗ったことから始まる。
初めての漁は船酔いがひどく、まともに動くこともできなかったことを今でも覚えているらしい。
その時は引き縄(トローリング)という、船舶を走らせながら釣り糸と疑似餌を出して行う漁を手伝っていた。父親から「おーい! 大鮪釣ったぞ」との声が掛かり、船酔いを忘れて見に行くと、そこには見たこともないような大きな魚が横たわっており、その時の衝撃は今でも忘れられないという。
その時に「海の中にはこんな魚も居るんだろうな」「今度は自分が釣りあげたい」と強く思ったのが漁師を目指した最初のキッカケ。
しかし、高校を卒業後は都内で2年ほど働いた後、夢を忘れきれず地元に戻り現職である漁師となった。現在は父親と同じ船に乗り、漁師となって今年で7年目を迎える。
延縄(はえなわ)漁とは?
延縄漁とは、1本の長い幹縄から多量の枝縄を分岐させ、その先に餌をつけて魚を掛ける漁の総称である。
今回、話を伺った池田さんは『一本延縄漁』と言われる漁を行っている。
池田さんが使用してる幹縄は1本1.6㎞にもなり、それを一度に12本流す。
※漁師の専門用語で海に仕掛けを投入することを「流す」と言う。
枝縄は1本の幹縄から16本に分かれている。
一回の漁で流す総距離は20㎞を超える。
メリットとデメリット
延縄漁にはいくつかのメリットとデメリットが存在する。
メリット
・大きな群れに当たれば多量の漁獲量が期待出来る
デメリット
・漁具、餌等のコストがかかる
・一度の航海が長く重労働
・鮫や海亀、海鳥など混獲する可能性がある
もともと父親が行っていたというのが最大の理由だが、これらのデメリットも踏まえて尊敬する父親を超えるため、また次世代にも受け継ぐためにも池田さんは延縄漁を行っている。
狙える魚種
潮の流れや、季節の応じて獲れる魚種は変わってくる。池田さんは一年を通じてマグロ類を中心に漁を行っている。
9〜11月:キハダマグロ、クロマグロ
11〜3月:マカジキ、クロマグロ
このほかの時期は延縄漁ではなく、遠洋漁業や引き縄漁などを行い、キンメダイを含むメダイ類なども狙っている。
延縄漁のスケジュール
では池田さんは一度の漁をどのようなスケジュールで進めているか平均的なスケジュールをまとめてみた。
pm5:00 餌釣り
まず最初にエサであるサバを釣る。エサの確保には約1〜6時間かかり、月の出具合や潮加減によって要する時間も変わってくる。
pm10:00 漁場へ移動
乗組員で交替しながら周囲の見渡し、約4時間程度かけて漁場に向かう。潮の流れなどによって到着時間は前後する。
am2:00 投縄支度
12本ある延縄を事前に1つずつ籠に入れて分けておく。
am3:00 投縄開始
12本の延縄を約2時間かけて全て海に投入していく。
am6:00 揚げ縄準備 朝食
回収のための縄を準備する。これと同時に朝食も済ませていく。
am7:00 揚げ縄開始
揚げ縄終了の時刻は魚の釣れ具合により異なるが約6〜12時間かかる。針にかかった魚を丁寧に一匹ずつ取り外すため、かなりの時間を要する。
pm3:00 帰港
帰港時間は漁にかかった時間や、漁場によって異なるが、平均して夕方前後に帰港する。
pm4:00 荷揚げ
採ってきた魚を船から引き上げる。
漁を行う上で大変なところ
一度の航海が非常に長い為、他の漁と比べかなり重労働である。
仕掛けや引き揚げに相当時間がかかる上、魚が掛かると道具が潰れることもあり、その都度、仕掛けの作り直しなどが必要になる。
池田さんの今後の目標
三宅島で漁業を生業としている若き漁師の池田さんは、「今後は親でもあり、師でもある父親を超える漁師を目指したい」と語ってくれた。
池田さんの父親は三宅島でも有名な漁師であり、昨年は400kgを超えるクロマグロを釣り上げた。
そんな父親をいつか追い越すためにも池田さんは今日も船に乗る。
<近藤/TSURINEWS・サカナ研究所>