毎年のように異常気象が発生する我が国。漁業の現場はもはやボロボロです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「スーパーエルニーニョ」が発生の見込み
毎年春になると「この夏も異常な暑さの予想」というニュースが流れていますが、今年はまた物騒な言葉が報道されています。それは「スーパーエルニーニョ」です。
エルニーニョとはスペイン語で「神の子」という意味ですが、クリスマスの時期に南米熱帯域沖合の太平洋で水温が上昇する現象のことを指しています。エルニーニョは数年に一度発生し、当該地域の水温が例年と比べて0.5℃程度高くなるのですが、今年発生するエルニーニョはなんと5℃程度も高くなることが予想されており”スーパー”がつけられています。
通常エルニーニョが発生すると、アメリカ大陸(東太平洋沿岸)の夏の気温が上昇する一方でアジア大陸(西太平洋沿岸)は冷夏になるといわれますが、スーパーエルニーニョはあまりに水温が高くなるため西太平洋側も気温が高くなると推測されています。つまり、我が国は今年も例年異常の猛暑となる予想なのです。
エルニーニョで養殖漁業がピンチに
エルニーニョは我々の暮らしを直接脅かすだけではなく、間接的にも負の影響をもたらします。例えば今年、養殖業者はエルニーニョのせいで利益が大きく減ってしまうことが危惧されています。
エルニーニョが発生すると、南米ペルー沖合の水温が上昇します。そうなるとペルーの主要漁獲種であるアンチョビ(カタクチイワシ)が水温の低い沖の深場に逃げてしまい、漁獲が減少します。
アンチョビ(提供:PhotoAC)アンチョビは養殖用の飼料に使われる魚粉の主原料であるため、養殖飼料はアンチョビの漁獲によって価格が上下します。したがって、エルニーニョが発生すると飼料が高騰し、一方で魚価はそこまで上げられないため、利益が圧迫されてしまうのです。
四重苦に苦しむ日本の漁業
エルニーニョに限らず、我が国の漁業は今年、非常に厳しい状況での操業を強いられる可能性が高いです。
まず、先月から続くホルムズ海峡情勢の影響で、漁船の燃料となる重油が不足しています。無理に出漁しても赤字になる一方ということで漁をストップする漁協も出ています。
停泊する漁船(提供:PhotoAC)さまざまな漁具や鮮魚流通の道具の材料となるプラスチック製品も、その原料となるナフサが石油由来のために完全な不足状態となっており、魚を採る道具がない、採れた魚を流通させることができないといった状況になりつつあります。
またそもそも、気候変動によって日本近海の水温が上昇し続けており、これまで採れていた魚が全く採れなくなっているという例も少なくありません。三陸海岸の鮭や瀬戸内海のイカナゴのように漁そのものが崩壊の瀬戸際にあるものもあります。
我が国の漁業は漁獲高や関連人口など様々な指標で右肩下がりが続いていますが、今年のスーパーエルニーニョとホルムズ情勢はそこにまた巨大な打撃を与えてしまうかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

