リールには「ドラグ」という機能がある。リールにかかった負荷に負けないために、イトを追従して出す機能だ。現代のリールのドラグの性能は、非常に高い。ドラグのおかげでとれた魚じゃないか?と思うこともある。ここではドラグ性能の基本と、設定方法、そして二大メーカーのドラグの味付けについて筆者の主観をまじえて紹介したい。むろん、他社含めドラグ性能に優劣をつける意図は一切ない。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・井上海生)
ドラグの役割
スピニングリールのドラグを前提としたい。ドラグの性能はスプールに設定されているが、その具合を調整するには、スピニングリールの頭部分にある「ドラグノブ」を回す。反時計回りに回せば、ドラグは緩む。時計回りに回せば、ドラグは締まる。
「緩む=イトが出やすくなる」
「締まる=イトが出にくくなる」
と簡潔に言えばそうなる。ドラグの調整を入れない釣り物はあまりないが、あえてドラグをフルロックすなわち締め切った状態にしてちっともイトが出ないようにして、魚の引きをダイレクトに味わうバスフィッシングも一部ある。その際には当然イトの強度を上げて、魚の動きで切られないようにしなければならない。
ドラグの役割は、釣り物の引きにイトを追従させることだ。魚の暴れを食い止め、強烈な引き込みにはしっかりイトを出してハリを口元から離れさせず、まとわりつかせて、ランディングする。リールの機能の中では、非常に大きなウェイトを占める。
ドラグの調整は釣り物に応じて変える
対象魚が何か?ドラグの設定は、まずそれを明らかにして、調整する。たとえば、アジとタチウオではまったく違う。
アジは繊細なアタリを出し、引きも微弱なので、ドラグは緩めに入れてイトを出しやすくする。
タチウオはアタリがはっきりした魚で、即アワセでフッキングさせ、ドラグをあまり出さずに一方的に巻いてくる。タチウオはバレやすい魚ではあるが、かといってドラグを緩めると大きい魚なら遊泳してしまうので、強めのドラグで短時間で決着してしまったほうがいい。
ブリなどの大型回遊魚もドラグは下手に緩められない。引きは強烈で、海中で暴れられると瞬間的に10㎏近くの負荷がかかることもある。だからといってドラグは甘くできない。緩めると、いつまでも泳ぎ続けられてしまう。
そうなると周囲のアングラーにも迷惑がかかるうえ、時間をかけての勝負となるとラインが疲労して切れてしまう。ある程度「相殺上等」という考え方で、魚に対しイーブンのドラグ設定をしたほうがいい。
ベイトによって繊細な調整を
基本的に釣り物の食い方と引きによってドラグは調整するものだが、例外も多い。その度合いを決めるのは、ベイトだ。シーバスを例にとると、バチ抜けといって春、多毛類を捕食しているシーバスは食いが浅い。ただでさえバレやすい魚なので、このときには若干緩めの設定をとったほうがいい。
場の条件によってはドラグ強め
ロックフィッシュでよくあることなのだが、岩礁帯周りや沈み根やえぐれが入った堤防で魚を狙うときには、相手有利の条件だ。一瞬で潜られてしまう。カサゴやメバルは本来多少ドラグを緩めてやったほうがノセがよくなるが、相手有利の場の条件ではフルロック近くにしないと、あっさり負けてしまう。
大手2社のドラグの味付けは?
リールメーカーにはD社とS社がある。筆者は両方のメーカーを同じ数ずつ使っている。ライトゲームで使う番手に限って、ドラグの特徴に面白いちがいがある。
D社のスピニングのドラグは、オートマチック寄りだ。多少甘い調整をしていても、魚がかかったときに、ほぼ自動的に、ちょうどその引きを相殺するのに等価のイトの出し方をする。
S社のスピニングは、マニュアル寄りだ。自分の手でこまめに入れる楽しさがある。微調整がよく効いて、「この設定じゃないと取れないな」という魚をうまくノセかけできる。
ベイトリールにはないドラグ音を楽しめ!
スピニングリールのドラグには、音があるから面白い。ジジジという弱い音から、きぃぃんという激しい音まで。魚が首を振るのに合わせて悲鳴を上げたりと、スリリングな演出をしてくれる。これが醍醐味ともいえる。ツウな人なら、ドラグ音までこだわって機種を選ぶだろう。
そしてこのドラグ音、面白いことには、ベイトリールには基本的にないのだ。一部、作為的につけられたドラグ音が鳴る機種もあるが、スピニングほどのリアルさがない。ドラグを入れて魚をうまく取る駆け引きと共に、たまらないドラグ音も堪能したい。
<井上海生/TSURINEWSライター>