ライトゲームでは時に至福の入れ食い状態と巡り合う。そうなるとむしろ邪魔なのが、普段魚をバラさないために重要な役割をするハリの「カエシ」「バーブ」だ。ちなみに伝統的な日本語表記をすると「逆鈎」というらしい。入れ食い状態のときにはカエシを潰してやれば手返しよく釣ることができる。今回は入れ食い時のバーブレスフックについて紹介したい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
入れ食いの敵「バーブ」「カエシ」
バーブすなわちカエシは、ハリの先端から数ミリ後ろに、ハリ先に向けて逆向きに生えている棘のようなもう1本のハリの造作で、掛かった魚をバラしにくくする働きをする、超重要なものだ。残酷な仕掛け、人間の奸智と言ってもいいだろう。いや、もしかすると自然植物の中にこのような造作が先にあり、人間がそれを真似たのかもしれない。
一般的なハリにはすべてカエシがついていると思っていい。一部カエシがない商品は主には競技用で、リリースや釣り上げた魚の取り込みを優先的に考えたものだ。ルアーフィッシングでは確実に釣り上げるために、90%のハリにはカエシがついている。バラさないためにカエシは必須だが、一方で魚が何をしても入れ食い状態のときには、邪魔になってしまうものでもある。
――ちなみに……古い話だが、少年時代、私は兄とバス釣りをしていて、根がかりを外した際にルアーが吹っ飛んできて自分の膝裏に完全に埋まるという、悪夢のようなアクシデントを経験したことがある。兄が走って母を呼びに行ってくれて、夜、父による摘出手術を受けた。そのときにもおそらくハリのカエシが、オペの難関だったはずだ。
バーブレスフックを持っておこう
カエシがないフックを「バーブレスフック」という。アジング用でいえば、こんなものだ。
小さなアジは口破れしやすい。ハリがかりしても、カエシで口横の皮を広げてしまうことがあり、それでバラしてしまう。ということで、私などと同様に、バーブレスフックを最初から用いる人もいる。このバーブレスフックが、入れ食い時には役立つ。簡単に魚の口から外れて、リリースできるのだ。手返しが倍近く上がる。
もちろん今からバーブレスフックを新しく買うのもいいが、手元にあるジグヘッドなどのハリのカエシを潰してしまって、バーブレスとする手もある。方法は簡単で、プライヤーでカエシを摘んでギュッと押し込み、棘を潰してしまえばいいのだ。
プラグもバーブを潰そう
ハリが多ければ多いほど、ハリがかりしたときにバラシにくくなる。トレブルフックに前と後ろガッツリとフッキングすれば、ハリは魚に6本掛かるわけで、そうそうバラすものではない。まあそれは理論上のことで、実際には掛かりどころによって魚の引きの水圧が増してしまい、ハリが曲がって、外れやすかったりもするのだが。
トレブルフックで多点掛かりして魚を上げてくるのはいいが、そのあとが大変だ。ハリを外すのに苦労する。メバルなどは往生の極みで、こいつがプラグ優先で食ってくるときには、1尾1尾のハリの取り外しの方が釣っている時間よりも長くなる。
メバルは足元で釣る魚で、プラグで掛けると外れにくい。よって、トレブルフックを同様にバーブレスにするのもアリだ。今ついているハリを上述と同様、プライヤーで潰してしまうといいだろう。
カエシがなくても意外にバラさない
この冬豆アジメインの入れ食いを久々に経験して、バーブレスのフックを再評価した。やはり豆アジはバラさない。意外だったのは、セイゴもバラさなかったことだ。掛けたヤツはでかいのに一尾イトを切られただけで、まったくバラしていない。あれだけハリがかりしにくい魚なのに、バーブレスですべて取り込めた。
「カエシがなくても意外にバラさない」との感触を得た。いや――言い過ぎしれないが、何かカエシによってスポイルされる瞬間があるのか、ヒット率さえ向上した気がする。
<井上海生/TSURINEWSライター>