魚の中には「サクラマス」「ヤマブキハタ」など、花の名前を冠するものがあります。そのようなものの中で、ちょっと独特なオーラを持っているのが「薔薇」を名に関するものです。
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「花の名前」が付く魚たち
四季それぞれに様々な花が咲く自然豊かなわが国では、花の名前を名に持つ生き物が少なくありません。
もちろん魚の中にも、そのようなものはたくさんあります。最も代表的なものは「サクラマス」でしょうか。桜が咲くシーズンに川を遡上するマスなので、こう呼ばれています。
またほかにもサクラダイ、サツキマス、モミジザメなど枚挙にいとまがありません。
トゲのある”薔薇魚”
このような「花の名前が付く魚」の中には、当然ながら「バラ」が付くものもあります。そのなかで、近年もっとも有名になったものはおそらく「バラムツ」でしょう。
この魚には消化できない脂が含まれており、食べるとお尻から油が漏出してしまうという非常に厄介な特徴があるのですが、それはそれとして名前の由来は意外なほど知られていません。
「バラムツ」の由来になったのは意外なことにその「鱗」。彼らの鱗は先端がモミジの葉のように開いた形をしており、鋭くとがっています。この刺々しい鱗がバラの棘を連想させたため、このような名前となったのです。
バラムツはゲームフィッシュとして釣りの人気対象魚になっているのですが、釣れた魚体を不用意に触ると、この鱗でひどい傷を負ってしまうので注意が必要です。
なお、同様に「鱗がバラみたいだから」という理由で名がつけられたものに、深海性のタラの一種「イバラヒゲ」がいます。
毒のある”薔薇魚”
このバラムツ、イバラヒゲ以外で、バラの名を冠するものももちろんいます。よく知られるのは「バラフエダイ」そして「バラハタ」でしょうか。
彼らはいずれも南方系の魚で、沖縄などで漁獲されています。これらの魚はいずれも濃厚な紅色の体色が目を引き、バラの花を連想させることがその名の由来となっています。
派手で大きく、食味の良いことで知られる魚なのですが、実は彼らは個体によってシガテラという毒を持つことがあります。食べる際には内臓を食べない、大型の個体は控えるなどの注意が必要とされます。
魚の世界の「きれいなバラ」は、棘だけでなく毒にも注意が必要なことがあるようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>