魚の部位で一番美味しいのは本当に「身」なのでしょうか?? いま、魚の「未利用部位」に注目が集まっています。
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マグロの「ホルモン」が人気
東京に先々月にオープンした、とある「マグロ料理専門店」で振る舞われているメニューがいま話題になっています。そのお店で食べられるのはなんと、マグロの「ホルモン」なのです。
そのお店のメニューに並ぶのは、マグロの「腸管」「ハツモト」「レバー」などといった部位の名前ばかり。まるで焼肉店のようです。
その中には、マグロ問屋さんでも食べたことがないような珍しい部位もあるといいます。コロナ禍で飲食店には厳しい情勢が続くにも関わらずすでに人気店舗となっており、連日予約で埋まっているのだそうです。
魚の「変わった部位」
こちらの店での人気メニューのひとつに「エラブタ」があります。エラブタは頭部にある薄い板のような部位で、鶏のようなコラーゲンを感じられるのが人気の秘密。
実はマグロに限らず、大きな魚は鰓蓋の周りにもわずかながら肉がついており、またゼラチンたっぷりの皮ももれなくついています。このようなものは焼いて食べると非常に美味です。
更に大きな魚であれば「鰓(鰓弁)」そのものも食べることができます。魚の鰓は見た目が真っ赤な上に生臭みが強くとても食べられるように見えませんが、しっかり洗って血を抜き湯引きすれば食べることができます。プチプチコリコリとした食感が独特で美味です。
アラもごちそうに
鰓周りの他にも、唇や舌、頬肉、眼球などといった魚のパーツには、美味しく食べられる部位が意外なほどたくさん付随しています。大きな魚のこれらの部位を、それぞれに合った方法で調理すると、それだけで立派なごちそうになるのです。
そして、魚を愛する我が国には「それ」を追究した料理があります。大分県竹田市に伝わる「頭料理」です。
大分県で最大の河川である「大野川」の上流域に位置する竹田市。山奥にあるため新鮮な魚が手に入りにくい当地では、腐敗スピードの遅い大型の魚を海沿いの街から運び、あらゆる部位を無駄にせず食べてきました。
頭料理は様々な部位を丁寧に仕分け、別々に調理し一皿に盛り付けるというもの。非常に手間のかかる料理で、今では料亭でも振る舞われる高級品となっています。
SDGsの観点
魚の頭や内臓などの「アラ」は、その調理の手間を鑑みると採算が取れず、多くの場合いっしょくたに廃棄されてしまいます。しかし多くの廃棄物と同様、一つ一つ仕分けると非常に有益な食材となるのです。
このような料理は、SDGsの観点からも今こそ見直されるべきものであるといえるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>