年末年始に欠かせないウニ、イクラ、カニなどの高級魚介。しかし今年はそのいずれも、我々庶民には手の届きにくいものになってしまいそうです。
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赤潮でウニが大量死
北海道沖で9月から発生している赤潮が、その被害を拡大しています。異常増殖したプランクトンが海中を酸欠状態にしてしまう赤潮の影響で、ウニの大量死が発生しているのです。
特に大きな被害を出している道東・厚岸町では、ウニの栽培漁業が盛んで、例年10月にウニ漁の最盛期を迎えます。しかし今年の漁開始からの水揚げは、たったの6t。これは例年なら「2日分」の漁獲にすぎないのです。
厚岸町では今年の11月のウニ漁を断念し、ウニの生育状況を見守るということです。(『ウニ大量死で「仕入れ値2倍」 赤潮の影響で価格に異変 宮城県内の飲食店も打撃』仙台放送 2021.10.22)
ウニが歴史的高騰
このウニ大量死の影響で、当然のことながらウニの価格は高騰しています。
今回の赤潮による北海道の漁業被害76億円のうち、その大半である69億円がウニの被害額となっています。その結果、この時期のウニを扱っている鮮魚店では、仕入れ量が半分以下になるところも出ているそうです。
入荷量減に伴い、当然ながら価格も高騰。市場によっては倍以上の価格となったところもあるといいます。
さらに、厚岸町では放流したての稚ウニもこの赤潮の影響で死滅していると見られるため、向こう数年は漁獲が見込めない状態だといいます。つまりこのウニ価格高騰は、経済的な措置が取られない限りは非常に長引く可能性が高いといえるのです。
イクラや毛ガニも価格高騰
赤潮は海中を酸欠状態にしてしまうため、その影響は幅広い種類の魚介類に現れます。すでに北海道南岸では秋鮭の定置網漁にこの赤潮が直撃しており、サケの大量死が発生。水揚げが激減し、その卵であるイクラの価格が高騰しています。
イクラの最大の輸入先であるロシアでも、やはり赤潮や海洋温暖化の影響でサケが歴史的不漁となっており、ロシア産イクラを原料とするイクラ醤油漬けの価格も非常に上がってしまっています。
さらには、9月に解禁されたばかりの毛ガニ漁にも、赤潮の影響で不漁になる地域が出ているそうです。
このように現在、ウニ、イクラ、カニと年末年始を彩る高級食材が軒並み不漁による高騰状態になっており、我々庶民には手の出しづらい価格になっています。今年の年末年始は、例年と比べちょっと寂しいものになってしまうかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>