鹿児島で稚アユ狙う『エゴ漁』実施 食味も価格も生魚に負けず劣らず?

鹿児島で稚アユ狙う『エゴ漁』実施 食味も価格も生魚に負けず劣らず?

日本の川魚で最も愛されるアユですが、その子である「稚アユ」もまた、親の七光りではないブランド力を持っています。

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エゴ漁で稚アユを獲る

全国有数の「稚アユ」産地として知られる、鹿児島県霧島市を流れる天降川。この川をさかのぼる稚アユを獲る「エゴ漁」が今年も実施されました。

エゴ漁はこの川で約70年前から行われているもので、地元では「春の風物詩」として親しまれています。毎年3~4月に、この河川の漁業を管轄する日当山天降川漁協により実施されています。

鹿児島で稚アユ狙う『エゴ漁』実施 食味も価格も生魚に負けず劣らず?稚アユ(提供:PhotoAC)

エゴ漁の「エゴ」とは鹿児島弁で「囲う」という意味。この漁では砂利とすのこで川を仕切った堤をつくり、それによって上流側をせき止め、下流側に仕掛けた網かごに入り込んだアユを水揚げします。漁獲された稚アユは県内外の河川の漁協に販売され、放流されます。(『囲って大漁 稚アユの産地で「エゴ漁」最盛期 不漁だった昨年から回復』南日本新聞 2021.4.22)

「稚アユ」が川を登る季節

サケやウナギなどと同様に、アユも一生の中で海と川を行き来する「両側回遊魚」です。海で生まれたアユの稚魚は3~5月頃になると、5cm~10cmほどに成長し各地の河川に入り、上流へと登っていきます。

小さいうちは成魚とは違い、まるでシラスのように透き通った体色となっています。そのため稚アユの漁獲の多い琵琶湖では「氷魚」とも呼ばれます。6cmほどになってくると徐々に透明感を失い、成魚と同じような体色になります。

鹿児島で稚アユ狙う『エゴ漁』実施 食味も価格も生魚に負けず劣らず?生きている稚アユ<(提供:PhotoAC)

河川に入ったばかりの頃は主に川虫などの動物性の餌を食べていますが、成長しながら川の中流域に差し掛かると一転して藻類などの植物性の餌を摂るようになります。

稚アユは食用にされる他、各地で釣りの対象となっているアユの数を増やすために放流されています。

「稚アユ」もまた高級食用魚

天然のアユは今や高級食用魚として有名ですが、その子である稚アユもまた食材として高い人気を誇ります。成魚ほどではないものの爽やかな香りがあり、骨が柔らかく強い旨味を持っています。

初夏を告げる食材として料亭などでも定番の食材となっており、養殖が盛んな成魚のアユと比べると入手も難しいことから、親をも超える価格がつくこともしばしば。都心に流通すると10匹で1,000円を超えることもあります。

鹿児島で稚アユ狙う『エゴ漁』実施 食味も価格も生魚に負けず劣らず?稚アユの天ぷら(提供:PhotoAC)

定番料理は天ぷらや山椒の実と合わせた佃煮などですが、風味が強いのでフリッターなどの洋風料理にしても美味しく食べられます。とくにアヒージョにすると、内臓のほろ苦さとアユ独特の青い香り、オリーブオイルが合わさって得も言われぬ風味です。

関西圏を除く都市部ではなかなか手に入りにくい食材で、値段も決して安くはありませんが、見かけたらぜひ食べてみてください。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>