アサリの不漁により潮干狩りの中止が決定している浜名湖ですが、実はカキも深刻な不漁に見舞われています。その原因には、釣り人に大人気のあの魚も含まれているようです。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
浜名湖のカキが不漁
静岡県西部に位置し、日本屈指の面積を誇る汽水湖・浜名湖。ここで120年以上続く伝統産業「カキの養殖」がいま、深刻な危機に見舞われています。2年連続の深刻な不漁に見舞われ、養殖業者が苦境に立たされているのです。
浜名湖のカキ生産量は2019年度に例年の約2割の水準にまで激減し、「50年に一度の大不漁」と言われていました。しかし昨年2020年度はさらにそこから半減、このままでは廃業する漁師も出かねないと漁協は危機感を隠せないでいます。
カキの養殖漁師で構成される「舞阪町養かき組合」は、養殖用の稚貝の購入や、食害対策の防護網などの費用を賄うため、クラウドファンディングを実施することを決定しました。これで獲得した資金は、2年後に出荷されるカキを育てるために活用されるそうです。(『浜名湖カキ2年連続不漁 稚貝購入へクラウドファンディング始動 養殖業者「伝統守りたい」』静岡新聞 2021.4.16)
カキの不漁は「クロダイ」が原因?
浜名湖のカキの不漁について、近年の著しい温暖化と黒潮の流入で水温が上昇したことが要因のひとつだと考えられています。2020年度は暖かい海域を好む赤潮原因プランクトンが増殖し、赤潮の被害が広がったことそうです。
その一方で近年、とある意外な魚によるカキの食害も不漁の一員なのではないかという説が発表されています。それはクロダイ。
クロダイは強い顎と歯でカキの殻も容易に噛み砕き、食べることができます。近縁種で温暖な海域を好むキチヌとともに、浜名湖では数を増やしているといい、その食害は無視できないレベルにあるそうです。
ただ現在、養殖棚を防護網で囲う新たな対策が効果を挙げており、2021年度に出荷する予定のカキは順調に成育しているといいます。
クロダイは「養殖物の天敵」
クロダイはタイの中では雑食性が強いという特徴があり、ときに「悪食」と言われるほど様々なものを口にします。地域によってはスイートコーンやスイカと言ったものが餌に使われることも。
そのように様々な餌で狙うことができる一方で、神経質で警戒心が強いためにかんたんに釣り上げることはできず、結果として釣りの世界では押しも押されぬ大スターになっています。
一方で、この広食性と、波の穏やかな内湾にも多く生息するという特徴が裏目に出たのが、今回のテーマである「養殖水産物への食害」です。
浜名湖ではカキのみならず、湾内のアサリの減少にもクロダイが関与しているという説があります。また東京湾に面した千葉県富津では、養殖のノリに対するクロダイ食害の被害が大きくなっているそうです。
悪食のため食味は微妙と言われるクロダイですが、ブランド養殖魚介類を食べた個体ならきっと美味しいはず。実際にクロダイを漁獲してB級グルメに加工しようという動きも出ており、今後より盛んになっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>