奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が、おいしいサワラの見分け方を紹介。旬や役立つ小ネタも併せて解説しよう。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
サワラの歯にご用心
去年、タチウオ釣りに行ったときのこと、思い切って購入したタングステンのタチウオテンヤにイワシを付けての1投目。30m付近で前触れもなくフッ。まさかと思っても、テンションは感じずに仕掛けは上がってきた。サワラカッターに6,000円を差し上げた……。
サワラは歯の鋭い魚である。「鬼鰆の刃」とでも書きたいくらいだ。
「春が旬」は誤り?
サワラは鰆と書くように、瀬戸内や大阪湾では春に産卵のために戻ってくる魚。讃岐では、麦の刈り取り前に手伝ってくれる親類などに振舞う「はるいお」と呼ばれる宴会で、サワラ料理が供される郷土の食文化がある。対岸の岡山でも祭り寿司にママカリとともに非常に好まれている。
「関西では主に仔を食べるので旬は春となり……」と書いてあるサイトもあるが、元々「旬」の概念が間違っているような気がする。昔は水揚げ量が最も多い季節を旬と言っていたが、今では脂嗜好が強くなったので、脂が乗った時期を旬というような傾向に変化している 。
秋には50から60cmサゴシクラスが多く、これくらいが調理もしやすい。
1匹買いがお勧め
サワラは古くから、冠婚葬祭や懐石料理に使われた魚で、おせちに入れる地方も多い。市場ではワラとかゴシとかゴチと大きさで呼び分ける。他の魚より可食部が多く(歩留まりがいい)、白身の魚と赤身の魚の旨味、舌触りが合体した絶妙の味となるが、冬場には脂が乗り「寒サワラ」と称されさらに旨味が乗る。脂肪含有量も14%とマグロ中トロに匹敵することから、トロサワラとも呼ばれる。ぜひこの時期なら1匹まるごと買いたい。
片身は刺し身、タタキ(柚子塩で食べたりポンズで食べたり)、片身は塩焼き、幽庵焼き、味噌漬け。アラからも旨味たっぷりの出汁がとれる。DHAもサンマより多く、受験生には健康的な面からもお勧めできる。
切り身で売っている魚屋や水産コーナーでは、サワラのアラを売っていないことが多いが、注文すれば安価で分けてくれるかもしれない。卵があれば煮つけ、カラスミ、白子ならホイル焼きにするが、味は記憶に残らない普通の味。卵に塩をしてお酒で塩辛風にすると珍味。