近年、少しずつ生息域を拡大している「ティラピア」。原産地がアフリカや中近東などの同魚が日本でも増殖中です。今回は「ティラピアは何しに日本へ?」をお届けします。
(アイキャッチ画像出展:Pixabay)
ティラピアの概要
ティラピア (テラピア)は、スズキ目カワスズメ科に属する一部の魚を指している総称です。
原産地はアフリカや中近東などの赤道以北の地域ですが、食用として世界各地の河川に放流されたため、現在はものすごい勢いで生息域を拡大させています。
非常に丈夫で、生息環境への適応能力も高いため、かなり劣悪な環境でも生きていけるうえ、汽水域でも生息が可能です。しかし、低水温は苦手なため、水温が10度以下になるような場所では生息が確認されていません。
ティラピアの食性は悪食として知られており、口に入るものは動物から植物まで見境いなしに食べてしまいます。
1962年にエジプトから日本へ上陸
日本に導入されたティラピアと呼ばれているサカナは、カワスズメ科のナイルティラピア、カワスズメ(モザンビークテラピア)、ジルティラピアの3種類です。ちなみにジルティラピアはカワスズメとナイルティラピアと体形は似ていますが、後者の2種類に比べて水温や塩分の変化には強くないようです。
日本へ最初に持ち込まれたのは、1962年にエジプトのアレクサンドリア水族館から研究用に寄贈されたものだと考えられています。
その後、第二次世界大戦後の食糧危機に対抗するための貴重なタンパク源として注目されるようになり、日本にも食用として持ち込まれるようになりました。
ティラピアの食味はタイ?
ちなみにティラピアは以前までは普通にスーパーなどの鮮魚コーナーで販売されていたり、回転ずしで鯛の代わりに流通していました。
「イズミダイ」や「チカダイ」というラベルを見たことはありませんか?
これは日本でのティラピアの流通名として付けられた名前です。その由来としてはティラピアは見た目がクロダイや鯛に似ていたこと、そして味や食感も非常に似ていたことが理由とされています。
しかし、食品表示法の改正により「イズミダイ」と表記して販売することができなくなり、その後、店頭や回転ずしで見かけることはめっきり無くなりました。また生産量や人件費の観点からコストパフォーマンスがあまり良くなく、さらに、近年では、日本では鯛そのものが大量に養殖されはじめ、めっきり姿を目にしなくなりました。
その後、養殖用に持ち込まれたものが逃げ出したり、手に余ったものが放流されたなどの理由で野生化し、現在は西日本を中心に生息域を拡大させています。
西日本の一部の大型スーパーでは今でも「ティラピア」の刺し身や、冷凍の切り身などが販売されているので、興味のある人はどこで販売されているか調べてぜひご賞味ください。
アジア圏ではメジャーな食材
日本で定着しなかった理由としては、日本が島国で漁業が盛んだったこと、ティラピアに頼らずとも、美味しいサカナが年中取れたことが一番の理由でしょう。
しかし、世界各国ではティラピアはかなりメジャーな食材です。特に近隣諸国の中国や台湾ではかなり人気で、養殖も非常に盛んに行われています。
鮮魚店ではイワシやサバ、サーモン、マグロなどといった海水魚などと一緒に店頭に並んで販売されています。
ティラピアの身は意外と臭くなく、非常に淡泊で旨味が多いことで有名です。雑食性の為、内臓はさすがに匂いが強いですが、切り身にすれば全く気にならないのだとか。
そのため、食べ方も多岐にわたり、唐揚げや蒸し魚、煮魚、スープなど広く利用できることも人気の理由でしょう。
観賞魚としても人気
ティラピアを含むカワスズメ科のサカナには、アフリカンシクリッドやディスカスと言った観賞魚のなかでも根強い人気のある種類のものが多いのも特徴です。
丈夫で飼育が容易なうえに、色鮮やかなものが多いのが人気の理由です。
アフリカンシクリッドやディスカスは子煩悩なサカナとしても知られ、マウスブリーディングやディスカスミルクなどといった特徴的な保育を行うところも人気のひとつでしょう。
しかし気性の荒い種も多く、縄張りに侵入してくる他魚を執拗に攻撃することがあります。この性質は大きくなればなるほど顕著に表れるため、ブリーダー泣かせな一面も持っています。