夏のヒラメは「ネコまたぎ」なんて不名誉な名前が付けられるが、冬に近づくこれからは身に脂が乗っておいしい季節、呼び名も「寒ビラメ」とかわり珍重される。そこで今回は、おいしいヒラメの見分け方を、奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が紹介する。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
ヒラメの旬
秋が深まり、これからは春に産卵を控える魚が旬を迎える。ヒラメもそんな魚のひとつで、4月の産卵後のヒラメとこれから1月くらいまでのヒラメでは、味も値段も雲泥の差がある。と、これはあくまで天然のヒラメの話で、養殖のヒラメは産卵期には味が落ちるものの、天然ヒラメほどではない。
天然物と養殖の見分け方
天然と養殖のヒラメの見分け方は簡単で、裏(白いほう、無眼側)がツートンカラーになっているかどうか。天然物の無眼側は真っ白だ。どちらがおいしいかは好みによる。
養殖の方は年中脂が乗っているので、夏場は天然ヒラメよりおいしいと感じる人も多い。ただ、養殖物は過保護育ちのため肉質がしっかりしていないものが多い。日持ちしないので、購入したらなるべく早く食べないといけない。
ヒラメの目利き
では、おいしいヒラメの見分け方を紹介していきたい。
切り身
ヒラメと聞いて、まず思い浮かべるのが、スーパーで売られている刺し身用の短冊ではないだろうか?これを選ぶ際は、身の透明感があるものを買おう。これは養殖も天然も同じことが言える。透明感のある飴色のものは新鮮で、口の中で歯を押し戻すくらいの弾力がある。
反対に白っぽい物は避けた方がいい。魚が新鮮でも取り扱い方が悪いものは身が白っぽくなっている。
ちなみに、養殖ヒラメではクドア・セプテンプンクタータという寄生虫による食中毒が報告されている。肉眼では見つけられないため、養殖業者が出荷前にモニタリングして陰性かどうかを確認している。
1匹で売られている場合
1匹で売られているものは、エラの色、絞めてあるか、体や縁側の厚み、表面のつやのあるぬめりを見て買う。触ることが可能であれば、背中側から尾の方向にスーッとなでると、肥えているかが分かる。
産地は北海道から九州まで幅広い各地から入荷する。水槽におとなしくなじんでくれるため、活きたまま入荷する個体も多い。関東では房州物が一番というが、これは産地が近いからだろう。
あまり大きいものは大味になるので3kgまでのものがおすすめだ。
一方で、養殖ヒラメは鹿児島や韓国産が多い印象だ。背ビレを指でシャリシャリと擦って反るようなものがよく活かっている。
避けた方がいい個体
ヒラメを釣るのに活きたエサやルアーを使うことが多いように、ヒラメはフィッシュイーターと呼ばれる魚だ。このエサがお腹のなかにあると、先に臭くなる。胃の側にある肝も色がかわり、臭いも移ってしまう。
このような個体は、白いほう(無眼側)が青くなっている。青丹と呼ばれており、区別ができる。これは買わない方がいい。
食し方は様々
ヒラメといえばやはり縁側だろう。泳ぐ時に盛んに動かすので、味、歯応えとも最高だ。また、皮の湯引きや肝の煮つけもおいしい。
今年も何匹かヒラメを釣ったが、刺し身、昆布〆の後は煮つけにして、食べ終わったら、さらに熱湯をかけて身を取り、そのスープに身を浮かべて飲むのが美味で病みつきになる。
ヒラメの仲間
ヒラメの仲間でよく釣れるのに、コウライアカシタビラメ、タマガンゾウビラメがいる。普通、鮮魚店で売っているのはコウライを書かず、アカシタビラメと書いている場合が多い。
ヒラメとカレイの区別は、「右カレイに左ヒラメ」が一般的で、お腹側を下に向け頭がどちら側にあるかで見る。しかしヌマガレイはカレイの仲間だが、頭が左側にある。
また口が大きい方が、ヒラメと覚えている釣り人も多いだろう。では下の写真はカレイ?ヒラメ?どちらだろうか?