日本は四方を海に囲まれた島国であり、季節や場所によってスーパーに並ぶ魚介類も様々。特に秋は、産卵や冬に向けて、脂が乗り太った美味しいサカナがたくさんいます。今回は、なかでも9月に旬を迎える西日本のサカナを紹介します。
(アイキャッチ画像作成:TSURINEWS編集部)
9月の関西地方の旬『カマス』
「カマス」の仲間は日本で9種類が知られていますが、主に食用とされるのは「アカカマス」で「本カマス」とも呼ばれています。
体形は細長く、頭は小さめ、色はやや茶色をしており、腹側は白色をしています。
ちなみに、名前のアカやアオの色は魚種の色には全く関係ありません。
旬は、夏と冬の2回あるといわれ、出回り時期としては4~7月、9~12月に入荷量が増えます。
9月は夏の旬物が入荷し始める時期ですので、ぜひお試しあれ。
和歌山での代表的な食べ方
秋から春にかけて脂がのっている時期の「カマス」は、塩焼きにするのが一番。滴るほどの脂が口の中に広がることでしょう。
鮮度さえ良ければ刺身にもできるので、近年は寿司ネタとしても使われています。
酢締めにすると皮もやわらかくなり、皮下の味わいも存分に楽しめます。
三枚におろして皮目を焼いた炙りも絶品。
紀州(三重県、和歌山県)、四国では、酢締めの「かます」で姿寿司にするところも。
どんな食べ方でも外さない魚と言えます。
9月の四国地方の旬『マナガツオ』
カツオの名がつくが、サバ科とは縁遠いスズキ目マナガツオ科のこの魚。
名前にカツオがつくのは、西の方ではカツオを生で食べることがなかなかできず、同じ漁期のマナガツオをカツオとして見立てたことが由来。
カツオを真似た→「真似ガツオ」→「マナガツオ」と呼ばれるようになったという説もあるようです。
代表的な食べ方
鮮度落ちも早いのでなかなかお目にかかれないですが、刺身は絶品。
くせがなく身もやわらく、大きな骨もほとんどありません。新鮮なうちに食べることができるのは地元ならではの特権です。
刺身以外にも「塩焼き」、「煮付け」など、どんな料理でも美味しく食べられますが、西京味噌に漬けた西京焼きは、京都の有名店などで定番となっています。
また、香川だけかもしれませんが、給食の材料としても使われているのだとか。
西と東でかなり普及に差がある魚だと言えます。
9月の中国地方の旬『クロダイ』
クロダイ(チヌ)の水揚げ量が日本一の広島県。
広島といえば「牡蠣」が有名ですが、クロダイも負けず劣らずの名産品です。
比較的浅い海に生息し、漁業者はもちろん釣り人にも親しまれる人気の魚です。
実はこのクロダイは、かなり健康的な魚です。身は低脂肪・低カロリーでしかも高タンパク、皮に多く含まれているビタミンAには目や皮膚、粘膜などの健康維持に効果があります。
広島県の一部の地域では【産後3日以内の母親にチヌを食べさせる】という風習も一部の地域に存在し、「黒い魚は毒消しになる」「血液の循環がよくなり、母乳がよく出る」と言われて古くから愛されています。
代表的な食べ方
新鮮で非常に透明感のある白身の身は、お刺身や洗いにするのがベターです。
また、クロダイは熱を通しても身が硬くなりにくいため、塩焼きや煮つけにも向いています。
クロダイは雑食性のため、牡蠣やウニなど高級品を日頃から食べている個体は、他の地域の個体よりも味が濃厚だとか。
そんなクロダイを丸々楽しめるのが「チヌ飯」。
元々は漁師さんが船の上で食べる漁師メシでしたが、あまりの美味しさに、最近では料亭で見かけるようになりました。
鯛メシに近いですが、真鯛とはまた違ったワイルドな風味をぜひ楽しんでみてください。
9月の九州地方の旬『川アンコウ』
川アンコウとは、アンコウの仲間ではなく、福岡県大川市筑後川でとれるナマズのこと。
大川市では、アンコウに似ていることから、この天然ナマズを「川アンコウ」と呼んでいます。
筑後川のナマズは、汽水域で育つため川に生息しているものよりも臭みが少ないのも特徴です。
また昔から産後の体力回復のためによく食べられており、滋養強壮に効果があるとされています。
地方での代表的な食べ方
臭みがなくあっさりした味わいの川アンコウの味はアンコウに似ており、低カロリーで高タンパク。
洗いをはじめ、天ぷら、炊き込みご飯などで食べるのが一般的ですが、大川の新しいグルメとして、川アンコウのフライをサンドした「川アンコウバーガー」が最近のトレンドだとか。
ナマズは美容に効果のあるビタミンEやビタミンB1が豊富に含まれており、女性におすすめです。
9月の沖縄地方の旬『ロウニンアジ』
ロウニンアジは体長180cm、重さ80kgにもなるアジ科最大級の魚です。
釣り人からはGT(Giant trevally)とも呼ばれ、非常に人気の魚種です。
スポーツフィッシィングのターゲットになるため、釣った後はリリースされることも多いですが、それ以上に注意も必要な魚です。
食用にするときはあまり大きい個体ではなく体重が4~5kgの個体が最も美味しいと言われています。
生息地によっても違いますが、大型の個体はフグが持つフグ毒よりも猛毒といわれるシガテラ毒を持っていることがあり、食用にはされません。
現在、アジ科では体長30cm以上のカスミアジとギンガメアジが東京都市場衛生検査所の通知により販売中止の指定魚になっています。
ロウニンアジは販売中止には指定されていませんが大型の固体にはシガテラ毒を持っているものもいるため食用にするには注意が必要です。
代表的な食べ方
アジ類の中では最も大きいロウニンアジ。
なかなか入荷量は少ない魚ですが、実は生食の刺身や塩焼き、煮付けなどどんな食べ方をしても非常に美味しいと言われてます。
中でも、加熱しても硬くなりにくい身の性質は、煮魚に最適。
頭の部分は筋肉が多く食べられるところが多いため「ロウニンアジの兜煮」がおすすめ。
ほどよい甘味と甘辛いタレが最高にマッチします。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>