日本の研究機関(水産研究・教育機構)が行っている、サンマの資源調査(令和元年度 サンマ長期漁海況予報)の結果が7/31に公開されました。サンマの漁獲量と値段について調べてみました。
(アイキャッチ画像出典:Pixabay)
漁獲量の推移
日本の秋の食卓に欠かすことができないサンマが、減少傾向にあることが近年国内でも問題視されています。
しかし、減っていることは知ってても、どのくらい減っているのかよくわかっていないのが現状だと思います。周辺国における漁獲量と合わせて、推移を調べてみました。
『サンマ漁獲量の推移』(出典:農林水産省 (file:///C:/Users/tenbo2017_03/Desktop/20190731sanmayohou.pdf))
1950年頃のピークの時期と比べて漁獲量が減っていることは明らかで、その量は1/4くらいになっていることがわかります。
また、日本の漁獲量の減少とともに目立っているのが、中国・台湾など隣国の漁獲量の増加です。
これは近年、海外で日本食文化が流行がしていることが大きな要因のようです。1950年頃には全く食べられていなかったサンマが最近では食卓にも並ぶようになっているようです。
2019年初の水揚げの状況
サンマの水揚げ量が9年連続で全国一の根室市の花咲港には、2019年8月22日朝、5隻の中型船が北太平洋の公海(特定の国家に属さず、各国が自由に、平等に使用できる海域の意)で取れたサンマを初水揚げしました。
待ちに待った初水揚げでしたが、今年のサンマは小ぶりなものが多く、水揚げの量は約17tにとどまりました。
例年この時期には連日、100t以上が水揚げされることを考えると、今年の漁獲量もかなり心配になってきます。
今年のサンマの値段予想
世間では9月現在どれくらいで販売されているか調べたところ、今のところ冷凍ものでは98円〜128円(税抜)位で出回っているようです。
旬の時期に水揚げされた「新サンマ」・「生サンマ」として売られているサンマはまだ多く流通していませんが、2019年も不漁が続くことが予想され、昨年と同様に小売価格で200円〜300円台になることが予想されます。
1970年代では1匹あたり70円などで売られていたことを考えると、いつの間にか庶民の味覚から高級魚に変わってしまったかもしれません。
減少傾向の要因
ではどうして日本のサンマの漁獲量は減少しているのでしょうか。
その大きな要因は3つあると考えられます。
1.サンマの回遊ルートの変化
近年サンマが獲れない理由として、サンマの回遊ルートが変化してきていることがあげられます。
冷たい水温を好むサンマは、道東から三陸へと流れる親潮にのって南下します。近年、北海道の東には暖水塊(暖かい水のかたまり)というエリアが大きくなっており、サンマが日本の近海から少しづつ遠ざかってることが原因の一つと考えられます。
日本のサンマ漁は、近海での日帰り操業が主流のため、排他的経済水域内の近海ではサンマが獲れ難くなっています。
2015年も同じような状況だったのですが、日本の漁獲は伸び悩み、日本の漁獲率は過去最低の5.1%となりました。
2.他国の漁獲量の増加
前述の通り、中国や台湾などの各国でサンマの漁獲量が増えてきています。
これには(1)のサンマの回遊ルートの変化も深く関係しています。日本は排他的経済水域内の近海での日帰り操業が主流でした。
しかし、近年中国や台湾は日本の排他的経済水域のさらに沖にある公海まで冷凍設備のある大型船で出向き漁業を行っています。
これにより、日本の近海を通らなくなったサンマを先取りされる形になり、他国は漁獲量が増加、それに反比例して日本の漁獲量は減少してしまっていると考えられます。
以前ではサンマの漁獲漁で1位だった日本を近年では、台湾が抜き、さらに中国も台頭してきてます。
3.資源量自体が減っている
3つ目の大きな理由は、自然界に存在しているサンマ自体が減っているということ。常識で考えれば、以前は日本だけだったのに対し、近年のように海外の船がたくさん獲っていれば、減っていくだろうと思うかもせれません。
しかし要因はそれだけではありません。過去には日本しか漁獲していなかった1960年代に、漁獲量が48万トンから7万トンまで変動したことがありました。
大きな要因として、3つ考えられています。
・サンマの獲りすぎ
・自然環境により、生息域が正規ルートからズレた
・サバなど、食物連鎖に負けた
特に近年では、地球温暖化などにより、回遊ルートが変化しています。回遊ルートの変化はサンマの産卵などにも影響しているとされています。
地球温暖化とサンマの関係
サンマは東北や北海道での漁獲が多いため、北の魚というイメージが強いですが、実は、温かい黒潮から冷たい親潮まで回遊をしています。
サンマは秋から卵を生み始め、黒潮と親潮が混ざる混合域から冬には黒潮域まで、さらに春にまた混合域を中心に産卵をします。
卵は、黒潮に運ばれ、孵化し成長したサンマはエサの多い混合域、親潮域へと回遊し、また秋になると産卵のため南下します。サンマはこのような回遊を2回続け一生を終えます。
しかし地球温暖化の影響により、サンマの回遊バランスも崩れつつあります。100年後には、今よりも40gも軽いサンマになってしまうのではという予測もされています。
サンマが小さくなることで、さらに外敵から脅威も増えてしまいます。さらに人類のサンマ消費量も増えてしまえば、脂が乗ったサンマだけでなく、サンマ自体が食べられなくなるかもしれません。
今後の展望
おそらく今後はサンマの水揚げを確保するために、日本も漁船を大型化して、外洋までサンマを獲りに行くことになるでしょう。
資源が減少しているなかで、各国がこれまでと同じ量のサンマを漁獲すると、資源量はさらにドンドン減っていくでしょう。
昨年、日本は国際的な漁獲枠を提案しましたが、他国からの支持が得られませんでした。しかし、今回の提案では、日本のみが漁獲を大幅に増やし、他国はこれ以上漁獲を増やせないという、一方的な内容でした。
サンマは日本だけが所有する資源ではなく、国際的な共有資源だということを今一度考える必要があります。
全世界が納得する漁業枠を設定し、サンマを減らさないため政策が求められています。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>