今や、船、波止、磯などのジャンルを問わず、救命具(ライフジャケット)の着用は当たり前の事だが、時として落水時に救命具が脱げてしまったりと言った万一があるかもしれない。そんな時には釣行時に持参している荷物の中に、救命に使えるアイテムが存在する。今回はそんなアイテムと、その使い方を専門家に聞いてみた。
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「泳げる=溺れない」は大間違い!
長年、釣りをしていると突然、ドボンなんて、人が落水するのを目の当たりにする事もある。水泳が得意な友人がいきなり落水して、「あの人は泳ぎが達者だから」と、楽観していたら、実は溺れてもがいていたという経験もある。
自ら入水して泳ぐのと違い、突然の落水では頭の中がパニックになり、水泳をやっている人でさえ溺れてしまう事がある。
まして、波止釣りなどでは波止に上がれるような階段などの設備がないと大変。では、そんな時にどうすればいいのか。
ライフセーバーに聞いてみた
特定非営利活動法人・大阪ライフセービングクラブの理事・土居均さんに質問をぶつけてみた。ライフセーバーと言えば砂浜やプールなどの水辺で、主にレジャーを楽しむ人の安全を守る専門家である。
「人が落水した時にもっとも気をつけたいのは、自分が泳ぎが得意だからと言って身体一つで助けにいかない事です。これは二重事故の原因にもなるので危険です」と言う。
「溺れる者は藁をもつかむ」の言葉通り、溺れている人はすでにパニックに陥っており、こちらの言う事には耳を傾ける事はできず、浮いている人が近づけば「藁をもつかむ」勢いでつかみ掛かってくる事も多いそうだ。
釣行時の道具が救命アイテムに
では、どうすればいいか。実は釣りに持参している荷物の中でも、人命救助に役立つアイテムがいくつかあるとの事で、紹介してもらった。
1、ペットボトル
もちろん、飲み物を持参するのにペットボトルを使う人は多いハズ。考えてみれば、ペットボトルは中の飲料を抜いて栓をしてまうと浮力体となる。ただ、ペットボトル自体は軽いので、ロープなどでつないでしまうと、投げ込んでも落水者に届かない事態も起こる。
「少しの距離を稼ぐなら、完全に空にせず、水を少し入れてその重みで投げられればいいでしょう」との事だ。
500mlと2Lの使い分け
ペットボトルには大きさがあり、釣行時に持参するとしたら500mlか2lの大きさが多いだろう。知識として覚えておきたいのは500mlのペットボトル1本ならアゴの下に持ってくる、2本なら両脇の下、1.5Lや2Lの容量が大きい(浮力が大きい)ものなら胸で抱くという事。浮力が小さいほど全体を受け止められないので、呼吸を確保する事を優先するのだ。
2、クーラーボックス
クーラーボックスは釣り人なら誰もが持参しているアイテムだが、これもしっかりとフタを閉めて、留め具で止めておけば中身が密閉され、大きな浮力を得る事ができる。また、ペットボトルに比べて、自重もあるのでロープなどでつないでから、投げ込んでもある程度は距離を稼ぐ事ができる。
ただ、気をつけたいのはクーラーボックス自体、硬いので落水者に当たってしまうと元も子もないので注意。落水者が近ければできるだけ遠くに投げて引っ張ってくる。その距離が投げられないようなら落水者の左右に少し距離を空けて投入するのがいい。
3、目の詰まった素材のウエア(デニム)
「目の詰まった素材」とは、ジーンズなどが代表的なウエアで、濡れると水分が生地の間に膜を張る形になり、空気を保持できる。具体的な使い方としては「ジーンズの両足先を結んで水に浸け、空気を入れると風船のような状態になって、浮力を得られます」との事。
また、同様の考えで、風を通しにくいウインドブレーカーやレインウエアなども役立つそうだ。
気を付ける点としては、溺れた人はあまり服を脱がないようにしたい。確かに泳ぐ事を考えると、服を着ていない方が泳ぎやすいのだが、実際に溺れて居る人が服を脱ぐのは無理だし、脱いでしまうとこれから秋以降には水温により体温を奪われる事や、クラゲなどの危険な生物との遭遇も考えられるからだ。
落水したら「浮いて待つ」
ここまで3つのアイテムを紹介してもらったが、この3つのアイテムを使用する上での共通の認識がある。それが「浮いて待て」である。海上は潮の流れもあれば波もある。それに逆らって移動しようとすると、体力を奪われるので、出来うる限り体力は温存する。そのためのアイテムと思えばいいだろう。
そして、落水者を見つけた時には、複数の人が居ればできるだけ手分けして、落水者を見ておく人、実際に救助アイテムを使用する人、そして、関係機関に早急に連絡をする人など分担をする。
落水者を見つけたら、まずは人を呼ぶ。そして、海の緊急通報先である「118」番にすぐさま連絡を!
<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>