いよいよ夏本番。各地で様々なお祭りが開催されますが、お祭りと言えば「金魚すくい」!ところが、いざ飼い始めてみると、1週間もせずに死んでしまった悲しい思い出はありませんか?そこで、今回は金魚を少しでも長生きさせるコツを解説します。
(アイキャッチ画像出典:PhotoAC)
金魚の養殖は愛知県弥富市が盛ん
まず最初にみなさんは金魚がどのようなルートを経て、お祭りの出店で泳いでいるか知っていますか?
実はあの金魚は出店屋さんがコツコツ卵から育ててきた金魚ではありません。
日本各地には養魚場があり、金魚や熱帯魚を専門的に養殖・管理しているところがあります。
中でも愛知県の弥富市は金魚の養殖が非常に盛んで、金魚の競りも行われており、日本各地から美しく珍しい金魚を求めて卸業者が集まります。
ちなみに高い金魚は1匹2万円近くにもなるそうですが、私たちに馴染みのある金魚たちは1000匹で9000円弱くらい(1匹10円くらい)で取引されています。
私たちが掬う(すくう)までの流れ
話は戻りますが、私たちが金魚を掬うまでの流れは以下のようなになります。
①出店屋さんが問屋さんから買う(匹数を予約する)
↓
②お祭りの前日か当日に金魚を引き取る
↓
③お祭り数時間前にプールに放流される
↓
④私たちがすくう
こういった流れで私たちの手元に金魚がやってくるわけです。
では、ココからが本番です。
掬った金魚をなるべく長生きさせるためのポイントを6つ押さえましょう。
掬ってから水槽に放す手順通りに解説していきます。
1,持ち帰り方
最初に魚の持ち帰り方から。
金魚を掬うと、透明の紐付きの袋に入れて持ち帰ることになるかと思います。
そして、おそらく3~4匹ぐらいがその小さな袋の中で泳いでいることでしょう。
「わー綺麗だなー。かわいいなー」とうっとり眺めていたり、「さ。チョコバナナたーべよっ」と友だちと楽しく駄菓子を食べている時間の余裕はありません。
金魚を含め、魚はエラ呼吸なので、水の中に溶けた酸素(溶存酸素)しか吸うことができません。
小さな袋の中に入った瞬間から、酸素は刻一刻と減り続けていきます。
ですので、金魚を掬ったらなるべく早く持ち帰る必要があるのです。
だからと言って、大慌てで走って帰るのも禁物。袋の水が大きく揺れない程度にソッと素早く持ち帰りましょう。
2,魚を休ませる環境を整える
まず、掬ってきた金魚をどのような環境で飼うにしろ、最初は金魚を休ませてあげることが大切です。
酸素の少ない袋の中では金魚にストレスがドンドン溜まっていってしまいます。
まずは広い空間、そして酸素を確保することが先決です。
すでに魚を飼育している方であれば、余っている水槽や、飼育水を利用していただいて問題ありませんが、なんの準備もしていない方では「では水槽を用意しましょう」「水を用意しましょう」と言われても「どうやって?」と困ってしまいますよね。
そんな方にすぐにこれらを準備する裏技を伝授します!
2−a:水の準備方法
では、最初に水の確保から。お祭りから帰る前に自宅に連絡し、以下のように伝えましょう。
「今から帰るから、水を2~3分位沸騰させておいてほしい。可能なら冷ましておいてほしい。」
なるべく早く準備できたほうが良いのでLINEではなく電話が望ましいです。もちろんLINE電話なら大丈夫ですよ。
この連絡で水の準備は半分完了です。水道水にはカルキと呼ばれる塩素が含まれており、これは魚にとって非常に有毒です。
ここに金魚を入れてしまうと、毒の中に入れられるのと同じなので、すぐに弱ってしまい、最悪の場合、中毒で死んでしまいます。
ですので、水道水を一度沸騰させることでカルキを飛ばします。
そのままでは金魚が茹だってしまうので、常温になるまで待つか、冷凍庫で冷ましましょう。理想は26℃前後です。※冷やし過ぎに注意
ここまで完了すれば水の準備は終わりです。2Lくらい用意できればひとまず大丈夫でしょう。
2−b:水槽の確保
いきなり「水槽を用意して」というのもなかなか無理な話です。自宅にある1番大きな容器を用意しましょう。
バケツがあればそれで大丈夫です。ない場合は、調理用のボウルでも良いです。大きいものがあるならそれ一つで、小さいものしかない場合は2つくらい準備しましょう。大きければ大きいほど良いです。溶存酸素をなるべく多く確保するためにも、体積の大きい容器を用意しましょう。
2−c:酸素の確保
酸素を確保するためにはエアレーションが欠かせません。一般的に『ブクブク』と呼ばれる機械のことです。
これを使用することで、必要不可欠な酸素を確保する事ができます。
しかし、そんな機械がないよーという方はペットボトルのご用意を。ペットボトルに半分くらいまでカルキを抜いた水を入れ、1分間くらい思い切りシェイク!水が小さな泡で真っ白になるくらい振ってください。そうすることで、酸素を確保できます。
数時間したら、同じように用意した水を容器内の半分量の水と入れ替えて、常に新鮮な水にしてあげましょう。
この方法はその場しのぎの応急処置に過ぎません。翌日中までに必ずエアレーションを用意してください。
そのタイミングで水槽や飼育用の容器も購入してしまいましょう。
金魚3~4匹なら横幅30cmの水槽で問題ありません。夜のうちにネットでポチッとすれば、3000円もせずに用意することができます。
3,金魚を移動させる
水槽、水、酸素の3つが揃ったので、こちらに金魚をゆっくり移し替えましょう。
その際に水合わせという作業が必要ですが、その方法はこちらの記事をご覧ください。今回は、タイムリミットがありますので、少し荒療治ですが、以下の方法をご活用ください。
[1]金魚の袋を冷ました水に浮かべる(中に水が入らないように)
[2]5分後、袋の中に、最初から入っている水と同量の新鮮な水をゆっくり入れる
[3]15分後、中の水を半分捨て、②と同量の水をゆっくり入れる
[4]さらに15分後、袋の口を水の中に沈め、袋を完全に沈める。
[5]金魚が自分で袋の中から泳いで出ていくのを待つ
この5つで、ちょっと荒療治な水合わせの完了です。
魚を投入したら、タオルなどを容器にかけ、真っ暗にしてください。暗くすることで魚もおやすみモード。
寝ると酸素の消費量を抑えることができるので、休憩させるにはうってつけ。あとはエアレーションと水槽が届くまで定期的に水を新鮮なものに交換してください。
水換えの際は、容器からザバーと水を捨てるのではなく、紙コップなどを使って優しく水を抜きましょう。水を入れる時もなるべくゆっくりと。金魚にストレスを与えないように丁寧な作業でお願いします。
新しい飼育環境が整ったら、ようやくファミリーの一員です。
4,水質
水槽と酸素を用意できましたが、まだまだ油断は禁物です。水はドンドンと汚れていきます。魚も生き物なので、排泄をします。その排泄物はどこにあるのか。そう泳いでいる水の中ですよね。
排泄により、水槽内にはアンモニアが蓄積していきます。アンモニアも有毒なので、こまめな水換えが必要ですが、そう何度もいつまでも水換えはしていられません。だれか代わりに水をキレイにしてくれないかな。。。実はいます。しかも水の中に。
それはバクテリアです。
バクテリアはアンモニアを亜硝酸という物質に変えてくれます。そしてまた違うバクテリアが亜硝酸を硝酸塩という物質に変えてくれます。亜硝酸はまだ有毒ですが、硝酸塩はそこまで悪影響を及ぼしません。このバクテリアによる物質の変化をバクテリアサイクルと呼びます。
このサイクルが水槽内にできていないと、どんなに丁寧に育てていても、魚は1週間程度で死んでしまいます。
このバクテリアは勝手に繁殖していきますが、やはりできたての水層ではバクテリアの量が明らかに少ないです。
そして十分な量に繁殖するまで、およそ3ヶ月位かかります。それまでは、水槽内にアンモニアや亜硝酸が蓄積しないようにこまめに水換えをしてあげましょう。
3日に一回くらいの水換えを推奨します。バクテリアが水槽内に繁殖すれば水換えも週に1回程度でOKです。
5,エサ
飼い始めは可愛くてたくさん餌を与えたくなると思いますが、この行為は絶対NGです。
エサは水層を始めたばかりの頃は、水を汚す原因でしかありません。食べ残しもそうですし、前述の排泄物にも繋がります。
1日3食なんてもっての外です。最初の頃は3日に一回程度で問題ありません。なるべく水を汚さないよう意識しましょう。
バクテリアが増えてくれば、エサを増量しても問題ないですが、1日1食で問題ありません。しかも量は親指と人差し指で一つまみくらい。必要以上に水を汚す原因を作らないほうが得策です。
1週間が山場
最初の1週間を乗り切れるかどうか。
この山を越えれば金魚たちは強くたくましく育っていくでしょう。
よく、「金魚すくいの金魚はハズレばかりですぐ死ぬ。そもそも病気で捨てられる子たちが使われている」そんな言葉を耳にします。
しかし、実際は仕入れたばかりの金魚たちは、非常に健康で元気な子たちばかりなのです。
養魚場の方々も自信を持って送り出していることでしょう。長生きさせられるかどうかは飼育する人の努力次第。
しっかりと管理してあげれば、絶対に長生きしてくれます。
今年の夏、しっかりと事前に水層の準備をして、町内のお祭りに出かけてみてはいかがでしょうか。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>