漫画『釣りキチ三平』の釣り場を紹介 「カルデラの青鮒」は実在する?

漫画『釣りキチ三平』を読んで釣りを始めたという人も多いだろう。言うまでもなく、釣り漫画の金字塔だ。原作者の矢口高雄が実在する釣り場を題材にし、釣りをした体験を元に描かれた作品も多く、そのリアリティと臨場感が読む者を虜にした。今回は数多い珠玉作品の中から「カルデラの青鮒(アオブナ)」編とその釣り場を紹介したい。

TSURINEWS編集部 TSURINEWS編集部

淡水の釣り ヘラブナ釣り

漫画『釣りキチ三平』の概要

釣りキチ三平は、1973年から週刊まんが雑誌に10年間連載され、圧倒的人気を誇った。当時単行本コミックシリーズは全65巻出版され、海外でも翻訳されて発売されている。1980年にはアニメ化もされ、平成版は12巻、2009年実写映画にもなった。

筆者所蔵のコミックス(提供:週刊へらニュース編集部・麻生)

矢口高雄の生まれ育った秋田県横手市増田町(旧西成瀬村)での山村生活と体験が色濃く反映された作品だ。釣りの緊迫感と楽しさ、自然描写の美しさとヒューマンドラマ、自然に対する慈しみや環境問題、釣り人のマナー問題など、発表から半世紀近くたった今でも色あせることがない。私は釣りマンガの傑作だと思っている。

釧路湿原でイトウを狙う「イトウの原野」、「三日月湖の野鯉」、「O池の滝太郎」、「シロギスの涙」、「四万十川のアカメ」、「山上湖の舞姫」。「阿仁の三四郎」、「カナダのサーモンダービー」、「ハワイのブルーマーリン」など、タイトルを聞くだけでも心躍る。登場人物も魅力的だ。

特に初期の作品は作者の出身地秋田県で少年時代の記憶を辿り描かれた題材が多いと思われる。そのひとつが、初期のコミック第2巻に収録された「カルデラの青鮒」だ。

カルデラの青鮒の舞台

カルデラの青鮒の舞台となった「貝沼」は、矢口高雄が生まれ育った秋田県増田町に隣接する湯沢市皆瀬(旧皆瀬村)の山奥にひっそりと佇む小さなカルデラ湖だ。

カルデラ湖(提供:週刊へらニュース編集部・麻生)

カラス貝が多く獲れたことから貝沼と名付けられ、かつては鯉の養殖場であった。周辺は秋田杉や松林、落葉樹に囲まれ、春には桜が咲く美しく神秘的な沼である。近くには豊かな温泉が湧き出し、秘湯も数多くある。

マブナやヘラブナ、鯉にエビが生息し、冬になるとワカサギも釣れる。流入河川がなく、周辺の山々からの湧水で水位が保たれているので、透明度が高い。

古くからヘラブナ釣りが盛んな沼で、鮒類は鯉が移入されたときに、その卵が付着していて繁殖したのではないかという言い伝えられている。

カルデラの青鮒で描かれている風景は現在もそのままで、細い急な山道を登るとその幽玄な姿が突如眼中に広がる。かつては食用鯉の養殖が行われていたので、まんがに登場する小屋と舟が実際にあったが、現在はない。

35年前の1984年(昭和59年)6月22日号の弊社週刊へらニュースには、夢誘うカルデラの青鮒として紹介記事と釣り場図が掲載されている。漫画に発表された当時は関東からも沢山の釣り人が訪れ、愛好家や釣り団体によってヘラブナの放流も行われていたが、現在は放流されていないので魚影は薄い。

マンガにも登場と記載がある(提供:週刊へらニュース編集部・麻生)

今年の大型連休は5月でありながら雪が多く通行ができない状態であった。山深い地域のため熊注意の看板もある。

青鮒は実在する?

カルデラの青鮒編は、土地の人によると正体不明の体色が青みを帯びた青鮒がいるという出だしで始まる。果たして青鮒は本当にいるのだろうか?伝説かそれともマンガの世界だけのフィクションなのだろうか?

貝沼で釣る釣り友(提供:週刊へらニュース編集部・麻生)

10年前に筆者が夏休み帰省の折に実際貝沼で釣れたヘラブナは、確かに輪郭がやや青みがかっていて、全体的にエメラルドグリーンのヘラブナが多かった。水質の影響だろうか?

古い地元の釣り人によると、昔はもっと青くまさに鉄紺色のヘラが釣れたと証言する。他にも例会では10kg釣るとその中に、まさに青々としたヘラブナが1~2枚交ざったからはっきり判別できたという証言もあった。確実な証拠写真が今のところない。

しかしながらやはり実在する可能性はある。ここ3年ほど竿を出すも釣果なしだった。

1m近い青ブナのサイズ感

まんがでは主人公の三平が1m近い青鮒を釣り上げるのだが、水が凸レンズの働きをして光が屈折するため、水中を泳ぐ魚は実際の寸法よりも大きく見えることがよくある。

ヘラブナの日本記録は64cmで1980年青森県姉沼でかかった記録があり、実物がホルマリン漬けで、三沢市歴史民俗資料館で見ることができる。その横には日本ヘラ鮒釣研究会の認定証も添えられている。

そう考えると三平が水中で見た1m近いというセリフは、大げさではないだろう。

カルデラの青鮒は、その後の釣りキチ三平の幻の巨大魚を釣る基本路線を築いた重要な作品だと言える。

現在も青鮒を追い求めて

現在は地元のヘラブナ釣り愛好家たちによって、秋には青鮒釣り大会が開催されその夢を追い続けている。型をみるのがやっとでオデコ(釣果なし)も珍しくない貝沼になったが、この沼に立つと青鮒が釣れるのではないかと誰しもが感じるだろう。

最後にどうして美しい青鮒になったのかという質問に三平は答える。

「この貝沼の水が、いつも青く澄んでいるし、周りの景色もあざやかな緑でいっぱいだ。だから青鮒も知らず知らずのうちに身も心も青くなっていったんでねえべか。」※カルデラの青鮒より。

今読んでも心洗われるセリフだ。今でもカルデラの幻の青鮒を見たいという気持ちはあの頃とちっとも変わっていない。

いつか出会えることを信じて(提供:週刊へらニュース編集部・麻生)

<麻生/TSURINEWS・関東編集部>