これまで著者は、渓流釣りに必要な道具や具体的なテクニックについて、考えられる様々な方法を紹介してきた。ある時、ふと釣りのテクニック以外で自身に求められる要素は無いだろうかと考えたところ、およそ普通の方々には理解されないような部分が必要であったことに気付いた。今回は、そんな部分にフォーカスしてみたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)
必要なフィジカル
渓流釣りは、実に様々な要素が絡んだ釣りだ。まずは「渓流釣りならでは」とも言える必須要素、フィジカル部分をみていきたい。
体幹
真っ先に挙げられるのは体幹だ。著者が感じる要素の中でも、圧倒的必須項目となる。渓流釣りは基本的に平坦な場所を歩く機会がほぼ無い上、強い流れがある川の中を遡行することも多い。
楽器奏者は体幹が強い(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)不安定な足場で釣ることもあるので、体幹トレーニングは必須と言えるだろう。著者は音楽教室を経営していることもあり、専門楽器(ギター)を持ったままのスクワットをよく行っている。
腕力
延べ竿の重さに注目すると100g~200g程度とかなり軽量。その上、リールも使わない。一見すると腕力は不必要に見えるが、6mクラスの延べ竿をフルに伸ばすと手元にかかる負担は驚くほど大きい。これを不安定な川の中で1日中振ることになるので、それなりの腕力が必要になる。瞬間的なパワーというよりも、竿を支え続ける為の肩から腕の筋力と、その使い方を知るべきだろう。
伸ばすと重い延べ竿(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)竿を強く握るわけではないため、握力はあまり必要ないと考えている。著者は6mクラスの延べ竿の尻を、右手1本(掌のみ)で持ったまま釣ることも多い。
脚力
こちらも瞬発力ではなく、不安定な場所で持久的に体を支える為の脚力だ。また、時に高巻きをしたり、険しい岩場を乗り越えることもある。一時的に登山に近いような動きになることを考慮し、脚力も鍛えておきたい。
この岩場を乗り越えていく(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)必要なメンタリティ
続いてはメンタリティにフォーカスしていく。多くの釣りに共通した部分と、渓流釣りならではの部分を紹介しよう。
チャレンジ精神
この釣り方はどうだろう、この場所は釣れるかも……このような、「誰もがやらなそうなことをあえて試してみる」といったチャレンジ精神は非常に需要。トライ&エラーが非常に大ことな釣りなのだ。
山菜採りも楽しい要素(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)向上心
良い型が釣れたら満足、二桁釣れたからもう満足……というのは、資源保護の観点から言えば正解だ。だが、次回釣行時にもっと良いサイズを、もっと良い釣果を……と追い求め、常に現状に満足しない要素こそ、渓流釣りを上達させる秘訣だと考える。
研究心
何故このやり方では釣れなかったのか、何故あの時あの場所で良型がヒットしたのか。全ての要素に「理由」が存在し、偶然の要素はほとんど無いのが渓流釣りだ。
研究が報われる釣りだ(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)これら全ての要素に対して「何故」と研究する気持ちが非常に大切だと著者は考える。当TSURINEWSや、名手が出演している映像や書籍などから学べることは大量にあるはずだ。
諦めの心
これは長く釣りたいという気持ちを諦める、バラシた獲物に対して諦めの心を持つ、という訳ではない。渓流釣りは時に急激な天候変化によって、入渓そのものが危険になることがある。
ワンチャン行ける?は止めておく(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)こういった際に「ワンチャン行けるかも?」ではなく、「危ないから止めておこう」と考える気持ちこそ、身を守るために何よりも重要なことだと著者は考える。
必要な思考
最後に挙げたいのは、渓流釣り師ならではの思考だ。
魚の気持ちになる
いざポイントに到着した際、著者が真っ先に考えるのは「自分が渓魚なら」だ。厳しい自然界だからこそ、とにかく楽して餌を食べたい。だけど頭上の鳥からは身を守りたいし、酸素は欲しいし、時々休めたら最高……。
そう考えると、眼前にあるポイントから、自然と渓魚が定位する場所が透けて見えてくるから不思議だ。
川の流れを読む
前述の要素を踏まえ、いかに「ここぞ」のポイントへ仕掛けを誘導するかが大切だ。偏光サングラスを着用した上で、川の表面の流れを読み、深さと底流れをイメージするための作業は是非マスターしてほしい。
流れを読んでこその釣り(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)考えられる要素を整理
川の水位と流れの強さ、水深から始まり、濁り具合、水温、ストラクチャーの有無、季節、使用する餌、竿の長さと調子、仕掛けの太さ、自身の立ち位置、風の有無、過去の実績。現場で考える要素は驚くほど多いし、釣れる時はこれらの要素がしっかりと嚙み合っている。
これらの要素を整理するためにも、釣行記録をつけておき、次の釣行へと活かしていくことで、より良い釣果が期待できるようになる。
想定
ここまでの要素を全てクリアした上で、著者も時折魚をバラしてしまうことがあるのだが、大体の原因は「想定不足」によるものだ。「ここで食ってくるとは思わなかったから姿勢が良くない」、「想定していたよりデカイ魚が掛かった」、「良いポイントだからと気が焦り、取り込み時を考えていなかった」等だ。
常に様々なケースを想定して準備しておくことで、こういった「想定外」のケースも対応できるようになるはずだ。
上手くなればなるほど変態化!?
著者は音楽教室を経営しており、これまで多くの生徒様と釣りに行ったが、毎回「そこまでやるんですか!?」「考えたことも無かった」と言われる機会が大変多かった。別に名手のように釣りが上手いわけでは無いと思うが、周りから見れば「普通はそこまで考えない」ということの連続のようだ。
音楽業界では特に上手い人のことをよく「変態」と呼ぶが、釣りもある意味では上手くなればなるほど「変態」となるのかもしれない。魚が沢山釣れるなら喜んで変態と呼ばれよう、いやむしろ変態になりたい……というこの思考が、既に変態なのかもしれない。読者の皆様も是非、周囲から「あの人は変態だ」と一目置かれる渓流釣り師を目指してみてほしい。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>


