伊藤さとしのプライムフィッシング。その日その釣り場で最良の釣りを目指す。1カ月か月をメドに釣り方、エサ紹介などを伊藤の実釣を交えて解説する第4回。今回のテーマは「真冬に浅ダナセット?」。冬に強いと言われる段差の底釣り・チョウチンセットをさしおいて浅ダナを選択する。一見不利に見えるが、条件さえクリアすれば、速効性を持つこの釣りの長所が生きてくるはずだ。今回はタナを問わず、もはやセット釣りバラケに必要不可欠となった『粒戦』について考えてみる。
浅ダナセット
今回のテーマである浅ダナセットを含め、もはやセット釣りバラケの必須アイテムとなった感がある『粒戦』。
エサのジャンルとしては集魚および調整剤で、おもな特徴は水に溶けづらい粒状ペレットだと言うこと。効能は魚への強烈なアピール力だと言われる。また横に広がらず下へ下へと落ちるので、上ずり防止にもつながる。
「定番中の定番エサだから、訳も分からず〝とりあえず入れておけばいいんだろ〟的な扱い方をしている人が多いよね。エサメーカー的には使ってくれるのだからそれでもいいんだけど、この機会に復習の意味を込めて深く追求してみようか。」
ぜひお願いします。
でも前述したことがこのエサのすべてなのでは?
「まあ大筋はそうなんだけど、バラケ方について考えたことはある?」
下に落ちる…ではないのですか?
「ではどのように落ちるのかな?」
……。
「ほらね、肝心なところを理解してない。麸エサに粒戦を混ぜる。つまり比重が明らかに異なるもの同士がくっついた状態で水に入り解け始めるわけだよね。すると落下速度が速いのは?」
それは粒戦です!
「そう。つまりポロポロと表面から剥がれはじめたバラケから粒戦が先に落下を開始し、それを追うように麸エサが水中へと広がる。つまりそこには時間差が生まれるわけだよね。さらに横方向の広がり方も麸と粒では明らかな相違がある。」
粒と麸
粒のほうが狭い?
「ご名答。ではそこに食わせとの関係性を絡めてみようか。先に粒が落下するのだから、食わせにいち早くリンクするエサは?」
粒戦です。そして後追いするように麸エサが食わせにかぶさる。
「そうだね。ではそこにもし流れがあったらどうなる?よくあるでしょ。流れが出るとアタリが減ったって。」
バラケが流されてしまい、食わせにリンクしないからですよね?
「そう。でもそこに粒戦があれば、粒は比重があるから流されながらも食わせに到達できるとは考えられない?」
確かに。でも少量では効果が薄い。
「そう。だからもし流れが出てアタリが出づらくなったら、今より粒の含有量を増やせば食わせとのリンクが確立できるってことになるよね。」
なるほどなるほど。
「さらに水に浸した粒と浸さない(生)のとでは、後者のほうが圧倒的に沈むのが速い。だから流れが増したら、生の粒をバラケに差すのも有効な手段なんだ。」
でも粒の量が増えるほどハリ付けしづらいエサになりますよね。
「その場合は、セットアップなどハリ付けをコントロールさせるややネバリがあるエサを有効活用させればいい。」
つまり粒で食わせに誘導させると?
「流れが強くなったらね。通常は粒と麸のコンビネーション。時間差があるお互いの長所をうまく利用して、食わせに魚の口を誘導させる。それが近年のセット釣りの神髄とも言っていいよね。」
粒戦を使う注意点とは
粒戦を使う上での何か注意点はありますか?
「給水だね。とくに水温が低下する冬は、水の吸収に時間を要する。だから釣り座に着いたらまず粒戦に水を吸わせる。その後、仕掛けやエサの準備にはいる。目安としては最低でも5分以上。エサボウルをタテに傾けて、水を吸った粒戦が落っこちてこなくなったらOKかな。」
時間が足りないと?
「生に近い状態ほどハリ付けしづらいエサだから、不必要に練ったりしかねないし麸から水分を奪って本来の麸エサの特徴を消してしまうことにもなる。だから現場に着いたらまず粒戦。釣りの途中でも、バラケが残り少なくなる前に粒戦。これがお約束だろうね。」
粒戦の後差しはないのですか?たとえば使っているバラケに粒を差し込むみたいな?
「よくあるよ。たとえば経時変化してネバリが出てしまったバラケに、水に浸した粒戦を差すことで、一気にバラケ性を回復できるからね。」
それはなぜですか?
「経時変化=エサの目詰まりと考えるなら、そこに粒を混ぜることで密着性が弱まる。するとその弱まった部分からエサが剥がれやすくなり、結果的にバラケ性が増す。経時変化していない本来のタッチとは若干異なるけど、一時的にバラケ性を高めたい時などには有効な手段だろうね。」
次回も「真冬でも浅ダナセット?」です。
<週刊へらニュース 伊藤さとし/TSURINEWS編>
友部湯崎湖