釣り人から敬遠されがちな「ボラ」 実は世界的に重要な食用魚

釣り人から敬遠されがちな「ボラ」 実は世界的に重要な食用魚

釣りの定番ゲストとして知られるボラ。釣り人からの食味の評価は非常に低いことが多く、臭いというイメージが持たれていますが、実はボラは非常に美味しい魚ということはあまり知られていません。この記事ではボラの雑学や食文化についてご紹介します。

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ボラとは

ボラはボラ目ボラ科ボラ属に分類される魚で、海水、汽水、時には淡水域にも出現する大型魚です。主に沿岸の表層付近に生息し、時として大きな群れを形成し、デトリタス、甲殻類、藻類などを食べています。本種は世界中に分布し日本でも各地で見ることができるものの形態が似ている種があり、分類学的混乱があるようです。

ボラ目にはボラ科のみが属し、2024年4月現在、日本産のボラ科魚類は16種が知られており、南方海域では多くの種が見られます。特にボラとメナダは大型種で水産上重要な魚です。また、淡水域に生息するカワボラは国内では西表島から記録があるのみの稀種で、現在は採捕が禁止されています。

ボラは出世魚

ボラは成長段階によって呼び名が変化する出世魚としても有名なのではないでしょうか。

通常、オボコ→イナッコ→スバシリ→イナ→ボラ→トドと呼び名が変化し、トドは「これ以上呼び名が変わらない」ことから、行き着くところを意味する「とどのつまり」の語源にもなっているようです。

また、ボラは地域によっては採集可能なサイズと時期が決められており、時期によって決められたサイズ以下のボラを採捕禁止にしています。意外にも知らない人も多いので、該当する地域で採集する場合には注意しましょう。

ボラは世界的に重要な食用魚

ボラは名前こそ有名ですが実際に食べたことがある人は少ないかもしれませんね。実は日本をはじめ世界中で食用として漁獲されている魚です。

日本でも定置網や刺し網で少量漁獲があり「寒ボラ」と呼ばれる寒い時期に獲れるボラは非常に味が良いことが知られています。洗いや塩焼き、ムニエルなど様々な料理で食べられており、地域によってはボラを使った郷土料理が継承されているようです。

ボラを使った郷土料理「いな饅頭」

愛知県蟹江町ではボラの若魚であるイナを使った郷土料理「いな饅頭」が有名で通称「いなまん」とも呼ばれます。

饅頭と名前に付いているものの饅頭にイナが使われている訳ではありません。いな饅頭は内臓を取ったイナのお腹に銀杏やしいたけ、八丁味噌を詰め込んで焼いたものです。焼いた姿が饅頭のように見えることからいな饅頭と名付けられたとも言われています。

現在、いな饅頭が食べられるお店は少ないですが、かつてはお祝い事に欠かせない料理だったようです。

卵巣を加工した高級食材からすみ

ボラは身だけではなく内臓も食用として用いられます。むしろボラの卵巣は身よりも価値が高いと言えるでしょう。ボラの卵巣は高級食材である「からすみ」の原料であり、上物は1キロ数万円で取引されるそうです。

からすみのシーズンである10~11月頃になると魚屋や市場でボラの卵巣が多くみられます。また、この時期には卵巣の他に精巣(白子)、幽門垂(そろばん)も見られ、比較的安価で入手することが可能です。

食用のイメージが薄いボラですが、日本食によく使われる魚でもあるのでした。魚屋や市場のボラは美味しく食べることができるので、見かけたら是非食べてみてください。

釣り人から敬遠されがちな「ボラ」 実は世界的に重要な食用魚ボラの卵巣(提供:PhotoAC)

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(サカナト編集部)