カタクチイワシは「口が堅い」わけではない 資源量はこの数年で大幅ダウン

カタクチイワシは「口が堅い」わけではない 資源量はこの数年で大幅ダウン

サビキなどで釣れるターゲットとしても知られる「カタクチイワシ」。その生態について調べてみました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

カタクチイワシって?

カタクチイワシは「ニシン目・カタクチイワシ科・カタクチイワシ属」の分類される名前にもある通りイワシの仲間です。

ですが、刺身などで一般的なマイワシやウルメイワシは「ニシン目・ニシン科」に分類されており、カタクチイワシはイワシでありながらも、やや遠縁に分類されています。

カタクチイワシはイワシの中でも小型であり、成魚でも20cmにも達しません。

鱗は大きく、薄く、非常に剥がれやすいため、水揚げされた時にはすでに鱗がほとんど体から剥がれてしまうため、水揚げ時の海は鱗で真っ白になってしまうこともあるそうです。

カタクチイワシは成魚よりも稚魚の方が需要が高く、稚魚はちりめん、しらす、釜揚げ、生シラスなどに、成魚についてはめざし、煮干しの原料になる他、魚醤の原料、釣り漁の餌、家畜の飼料などに利用されています。

カタクチイワシは「口が堅い」わけではない 資源量はこの数年で大幅ダウン生シラスでも有名(提供:PhotoAC)

生息域や生活史

カタクチイワシの生息域は広く、北海道から九州南岸までの沿岸域、瀬戸内海にに分布しています。

沿岸から沖合の表・中層で大きな群れを形成して生活し、主にカイアシ類などの動物性プランクトンを主食としています。

産卵期は、1年を通して行われますが、春から秋にかけてが比較的多く、1度の産卵で2000~60000万粒を抱卵します。

カタクチイワシの寿命は2~3年で、成魚になるまでの期間が非常に短いのも特徴です。

名前の由来

カタクチイワシという名前を聞いて、想像するのは「口が堅そう」だということ。

しかし、名前のカタクチは下あごが上あごより短いことから【片方の口→片口→カタクチ】になったと言われています。

カタクチと言われるほどに大きな口は開けると目の後ろ側まで大きく開くのはこのいわしだけの特徴と言えるでしょう。

また、イワシの中でも背中が黒いことが特徴で、セグロイワシと呼ばれる事もありますが、様々な地域で水揚げされるためシコイワシやタレクチなど呼び名は無数に存在しています。

海の生物にとって必要不可欠な存在

カタクチイワシは海に関わる全ての生き物にとって非常に重要な存在です。

私たち人間も様々な方法で利用していますが、カモメやカツオドリなどをはじめとした海鳥、サメやカツオなどの肉食魚、クジラやイルカなどの海生哺乳類など食物連鎖の基盤を支えてくれています。

カタクチイワシ無くして多くの生物は生きていけません。

非常に高い繁殖能力、繁殖サイクルによって数を保っていることで海に関わる生き物は尽きることのない豊富な食糧とできるのです。

カタクチイワシは「口が堅い」わけではない 資源量はこの数年で大幅ダウンカタクチイワシの群れ(提供:PhotoAC)

資源量はこの数年で大幅ダウン

しかし、そんな海のゆりかご的存在であるカタクチイワシも推定される資源量は、2002 年の291万トンをピークとして減少傾向となり、2020年では大幅に数を減らし14.2 万トンと推定されています。

数字で見てもはっきりとわかる通り、減少傾向にありますが、まだ私たちの生活において大きな影響は出ていない状況ではあると言います。

もし影響が出てしまえば、私たちは今のような値段ではサカナが食べられなくなってしまうかもしれません。

カタクチイワシのような弱いサカナこそ未来のために守っていかなければならないのです。

<近藤 俊/サカナ研究所>