「カワムツって、うまいの?」。釣り仲間のこの一言で、カワムツを釣って、新鮮なうちにその場で調理して食べてみようと、物好きな釣り人が河原に集まった。釣法はフライフィッシングとテンカラで、併せて釣果対決も決行。淡水小物釣りは面白いぞ!
カワムツとは?
淡水小物のカワムツは、河川の上中流域ならどこにでもいるポピュラーな魚。
15cm近くに成長するとでっぷりと太り、背中の辺りはかぶりつきたいほどのムチムチ感が漂い、実にうまそうです。オイカワと同じコイ科の一種。
もともと分布域は関西圏ですが、近年は関東地方などにも生息域を広げ、釣りの初心者にも簡単に釣れることから、幅広い層に人気があります。
カワムツの生態
筆者が住む埼玉県西部地域の河川ではこのカワムツ、数十年前から増え、盛んに釣れるようになりました。なぜ、カワムツが増加したかは不明で、「アユの放流に交じっていた」という説もありますが、定かではありません。
当地を例にみると、釣れるカワムツの平均サイズは10センチ前後、稀に15センチ前後の大型が竿を絞ることも。メスよりもオスの方が大きく、5月から8月頃に婚姻色が出たオスの顔周辺には、ボツボツの突起物が出現して迫力満点です。
ポイントは、瀬のような流れが急なところではなく、どちらかというと、緩やかなトロ場を好みます。オイカワと混棲している河川では、特にその傾向が強く、オイカワを釣るなら瀬を、カワムツなら流れの緩やかなポイントを狙うというように、釣り分けることも可能です。
カワムツはルアーでも釣れる?
カワムツの釣り方は餌釣りが一般的ですが、ルアーやフライフィッシングといったゲーム性が高い方法でも良く釣れます。
特に、羽化した水生昆虫を水面で捕食している時などは、毛バリのチャンス。虫を模した毛バリを流すと、次々にアタックしてきます。
カワムツは、渓流のヤマメなどをフライフィッシングなど毛バリで釣るための練習用としても、最高の相手なのです。シーズンオフの手慰みにもなります。
フライとテンカラ仕掛け
さて、当日の釣り方はフライとテンカラ。
フライの仕掛けは、ロッド6・3フィート、ライン3番、リーダー5X8フィートのティペットなしの直結、毛バリはサイズ14番のシルバーサルタンとマーチブラウン。
テンカラは、ロッド3・3メートル、ライン3・5号のフロロカーボン4メートルのレベル、ハリス0・8号1メートル、毛バリ14~16番の黒色とシルバーボディのソフトハックルタイプ。
雑魚釣りにしては、毛バリのサイズが大きいですが、経験上、このくらいのサイズでもカワムツ(オイカワも)は問題なくアタックしてきます。大きな毛バリには大きなサイズの魚がヒットする傾向が強いようです。
また、フライ、テンカラともに水面に浮かべるドライフライタイプではなく、水面下を探るタイプをセレクトしているのも、一般に紹介されている方法とは異なるかも知れません。
このタイプの中で、ソフトハックル系の毛バリについては、ポイントに着水してもしばらくは浮力を保つので、ライズしている魚に対応できること。そして、水面下に沈んで、中・下層も探れるということが、ソフトハックル系を使用する最大の理由です。
マテリアルをそのままにサイズアップすると、ヤマメ用になります。
釣り場は成木川に
釣り場に選んだ河川は、東京都に水源を持ち、下流域で都県境を超えて埼玉県飯能市の入間川に合流する成木川という里川。
都県境付近の成木川は周囲に田園が広がり、とてものどかです。
一帯は、入間漁協(埼玉県)と奥多摩漁協(東京都)の共同漁場。そのため、当日はカワムツの調理用に水辺で火器を使用することを、事前に入間漁協へ報告し、承認を得た上で実施しました。
成木川の共同漁場で釣りをする際の入漁料については、どちらかの組合で購入すればOKです。雑魚釣りの入漁料は「乙種」400円ですが、ルアーやフライの場合は700円(いずれも店売り)の「特乙種」(リール付き)。
必ず、購入してから釣りを開始するようにしましょう。
いざ実釣へ!テンカラ不調?
さて、この企画に参加したのはフライマンの森下さんとテンカラマニアである筆者の2人。そして、カワムツを食べるということに興味を持って調理器具一式を持参して駆けつけてくれた調理担当の横田さんの計3人。
釣り場を見渡せる土手の空きスペースに、調理器具として使うキャンプ用薪ストーブなどを配置し、午前11時に食材調達のための釣り開始。
「釣ったら、天ぷらにしますからね―、頑張って!!」という横田さんの声援で送り出された筆者は、ひざ下程度の深さが十数メートル続く緩やかな瀬に、森下さんは筆者の下流に陣取りました。
食べられてしまうことを知ってか知らずか、この日のカワムツはテンカラ毛バリへの出方が芳しくありません。出ても、せいぜい5センチ前後がポツポツ。
それにひきかえ、森下さんはというと、ポンポンとリズムよく釣り上げています。型も良さそうです。
フライvsテンカラの勝負は?
釣りを中断し、森下さんのところに駆け寄ると、そのポイントには付近のカワムツが全部集まったかのように群れているのです!この段階で勝負ありです。
森下さんはニーブーツで流れ込みの下手に立ち込み、アップストリームでピュッとキャストし、見ている間にも12~13センチの「肉厚のおいしそうな良型!?」を数尾キャッチ。結果、1時間で筆者の小型4尾に対して30尾以上という大差で、フライに軍配。
カワムツやオイカワは集団で行動するので、群れがいないと釣りになりません。群れがいそうなポイントを選定した時点で、勝負は決したのです。