生息域拡大中の『イケカツオ』の生態 有毒?それとも無毒?

生息域拡大中の『イケカツオ』の生態 有毒?それとも無毒?

ここ数年、季節来遊魚として知られる秋の釣りターゲット「メッキ」の他に「イケカツオ」というサカナも黒潮に乗って来遊しているのをご存じですか?
少しずつ関東地方でも目にする機会が増えているようです。生息域を拡大中のイケカツオについて調べてみました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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イケカツオって?

みなさんはイケカツオというサカナをご存じですか?

イケカツオというのはスズキ目>スズキ亜科>アジ科>イケカツオ亜科>イケカツオ属に分類されるサカナです。

最近では秋のルアーフィッシングのターゲットであるメッキに混ざって釣りてくることで知られる機会が増えてきています。

一般的にはイケカツオは熱帯性の海域に生息するサカナで、最大で全長110cm、体重11kgに達します。

生息域はかなり広く、成魚はアフリカ東部やハワイ諸島でも確認されており、日本では茨城以南、水深100m以浅の透明度の高い海で確認されています。

幼魚については黒潮の混ざる汽水域で生息が確認されています。

名前にカツオと入っているにも関わらず、カツオの仲間では一切なく、むしろアジの仲間というのがまた面白いですね。

また、形態的な特徴でいうと、アジ特有の稜鱗「りょうりん」いわゆるゼイゴはなく、ツルンとした見た目をしています。

生息域拡大中の『イケカツオ』の生態 有毒?それとも無毒?アジにはゼイゴあり(提供:PhotoAC)

漢字で書くと?

イケカツオは漢字で書くと【逆鉤鰹】となります。

イケカツオの背ビレには鋭いトゲがあるため、釣り針の返しを連想させることから「逆鉤」とつけられたようです。

そして「鰹」とつくのは、カツオと同じように身が堅く”カタウオ”と呼ばれていたからだと言われています。

イケカツオの漢字表記はまさに「鋭いトゲのある堅いサカナ」を示しているのです。

毒があるって本当?

アジに毒のあるイメージは全くないと思いますが、このイケカツオには毒があると言われています。

一説では鋭いトゲ自体には毒はなく、ばい菌が入って炎症を起こすだけだともいわれていますが、痺れるような痛みが出ることから背びれ自体に毒があるものとされています。

この毒があると言われているのは背ビレと臀ビレですが、刺されても死んでしまうような猛毒ではないため、オニカサゴなどのように厳重警戒するほどではないようです。

しかし、アジ科のサカナですので、針を外す際に暴れて刺さってしまう危険性は大いにあります。

フィッシュグリップなどを用いるのがベターと言えるでしょう。

大型個体が美味しい

気になるのがイケカツオの味ですよね。

関東地方などではあまり見かけることもないため、味も想像しにくいですが、そこはアジ科ですのでご安心ください。アジ特有の風味豊かで透明感のある味がクセになり、好んで食べる人がいる人がいるほど美味しいと言われています。

しかし、大きさによって味に差があり、一般的にはより大型の個体の方が旨味が強く、20cm程度の小さな個体は旨味に欠けると言われています。

食べ方の基準としては40cmを境により大きければお刺身に、それより小さければ焼き魚にするなど工夫することで美味しく食べられるようです。

季節来遊魚ではなくなるかも

メッキと同じようにイケカツオも季節来遊魚であるため、秋が終わり水温が低下していくとともに生息することが難しくなってしまいます。

最近では当たり前のように関東地方でも釣れるようになり、釣れる期間も長くなってきています。

このことから日本近海の平均水温が上がっていることもう間違いありませんね。

近い将来、季節来遊魚という言葉はなくなり、喜んでいいものかは不明ですが年中釣れてしまうようになるかもしれませんね。

そうなると味がいいイケカツオは人気の好ターゲットになってくること間違いなしの今後注目のサカナと言えるでしょう。

<近藤 俊/サカナ研究所>