日本の鯛の中で最もマイナーながら、その味の良さでひそかに人気となっているものがいます。
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日本のエリート魚「タイ科」
日本の魚の中で最も有名なものと言えばやはり鯛。代表種であるマダイは祝いの席では欠かせない存在であり、同様の体形のものは「タイ型」と呼ばれるなど名実ともにわが国の魚の代表と呼べる存在です。
それ以外にも、やや小型で惣菜用として扱われながら、鮮やかな黄色が縁起物として扱われるキダイ、マダイよりも鮮やかな色合いで代用品として欠かせないチダイがあり、これらは同様に人気があります。
ほかにも、食材としてはそれほどメジャーではないものの、釣りの世界では押しも押されぬ大スターであるクロダイや、その近縁種でルアー釣りの対象として人気が向上しているキチヌ(キビレ)など、存在感のあるものがたくさんいるのがタイの一族なのです。
マイナーで変な名前……可哀そうな「ヘダイ」
しかし、そんなタイ科の魚の中で、他の魚と比べてはるかに知名度が低いものがいます。それは「ヘダイ」。
見た目はクロダイとマダイの中間のような魚で、これらの魚のようにおでこが出っ張らないのでなんだかのっぺりした見た目です。生きているときはきれいな銀色をしていますが、ほかの鯛と違い白みがかった銀色で平凡な印象を受けます。
何よりも間が抜けているのはその名前。他の鯛と比べてより偏平であることから「平鯛」と書いてヘダイと読むのですが、ヘとつくとなんだかおならみたいで食欲もわきません。
味はかなり上位!
しかしそんなヘダイにも、ほかに負けない魅力があります。それはずばりその味!
ヘダイはクロダイに比較的近縁な種なのですが、クロダイやキチヌと比べるとその味ははるかに上です。あまり大きくならないのでマダイと比較するのは難しいですが、同サイズなら同じくらい美味しいと思います。近年ではフレンチの材料としても人気が出ているようです。
面白いのは、この魚は若魚でも味が落ちないということ。東伊豆では10月ごろの一時期、ヘダイの20cmくらいの若魚が数多く水揚げされるのですが、これは脂がのっていて非常に美味しく、専門に狙う人も少なくありません。
知名度の低さゆえか安く売られており、見かけたら積極的に購入したい魚です。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>